今年3月に決算期を迎えた上場企業から随時、1億円以上の役員報酬を個別に開示しなければならなくなり、「誰が高額報酬をもらっているか」に世間の耳目が集まっている。これに対し、経済界は猛反発。だが、本当に必要なのは、額ではなく報酬決定過程の透明性を高めることのはずである。
「一億円を上回るか否かに関わらず、個々の取締役および監査役毎にその金額を(中略)開示する」
6月23日を予定している、みずほフィナンシャルグループの第8回株主総会。招集通知には、こんな「株主提案」が記載されている。
招集通知が手元に届いた6月頭、都内在住のあるみずほの株主は、すぐさま封筒を開封。当日は出席できないため、ボールペンを強く握り締めて議決権行使書の「賛成」欄に何重も丸をつけた。
そもそものきっかけは今年3月、金融庁が上場企業の役員報酬に関する開示を強化するため内閣府令を改正したことだった。
これまでは、役員報酬の開示は任意とされてきた。会社法上の役員(取締役、執行役、監査役)の報酬総額のみ、株主総会で承認を受けさえすればよかったのだ。
それが今回の改正によって、1億円以上の報酬を得ている役員の氏名、報酬額およびその内訳すべてを有価証券報告書で公表することが義務づけられた。
なかでも注目を集めたのが、「1億円以上に限る」という条項。みずほの株主はこれにかみつき、「1億円に満たなくても開示すべき」と、こうした株主提案をぶつけたわけだ。
「そりゃあ、(株主提案に)賛成しますよ。150万円分も買った株が、いまや60万円と半分以下。そんな経営をした経営陣がいくらもらっているか、すべて開示すべき」と冒頭の株主は怒りを隠さないが、みずほ側はすでにこの提案に反対の意思を表明している。
企業の5割が「お手盛り」
算定根拠欠く実態にメス
こうした株主の思いを尻目に、経済界は“1億円”をめぐって大騒ぎ、反対の大合唱を展開した。
財界トップ、日本経済団体連合会の御手洗冨士夫前会長は当時、有価証券報告書に総額を記載している企業が多いことを理由に、「すでに十分に開示している」とし、「プライバシーの侵害」と強く反発した。