9月7日(米国時間)にAppleの新製品「iPhone7」が発表され、同16日にも日本を含む世界での販売が一斉に開始される。そして10月後半には、同社が海外で提供している決済サービス「Apple Pay」がいよいよ日本で開始される。Apple Payについては、「黒船」や「Appleによる日本の決済市場の支配」など刺激的な見出しによる報道が散見されたが、その実際を知ることが、Appleの狙いや今後の影響についての正しい理解につながる。今回は、Apple Payの日本上陸にあたってビジネスマンが知っておくべき重要なポイントを解説する。
Apple Payとはどのような
サービスなのか?
コンビニやレストランで支払いを行う場合、現金やカードを使うだろう。これをiPhoneで置き換えて、財布から小銭やカードの出し入れなくスマートフォンだけで支払いを行えるようにするのが「Apple Pay」だ。Apple PayではクレジットカードまたはデビットカードをiPhoneに登録し、支払いの際にiPhoneに内蔵された指紋センサーである「Touch ID(タッチアイディ)」に指を載せるだけで決済が完了する。利用可能な場所は、Apple Payマークのついた非接触読み取り機を設置してある小売店のほか、オンラインストアが提供するiPhoneアプリの一部での支払い、そしてWebブラウザ経由での支払いだ。
このほかApple Payでは、Starbucksのチャージ式のストアカードやスーパーマーケットの会員カード、航空会社のマイレージカード、列車や飛行機の乗車券など、さまざまなカード情報をiPhone内に格納し、適時取り出して利用できる。複数あるカードの管理は「Wallet(ウォレット)」アプリを経由して行うことができるが、このようにスマートフォンのようなモバイル機器内に複数のカードや個人情報を登録して利用できる仕組みを「モバイルウォレット」と呼んでおり、将来的には家や車の鍵、そして各種身分証明や社員証もすべて取り込んでいくのが狙いだと考えられている。
日本では携帯電話に電子マネーや会員カードを登録して利用するための仕組みとして、NTTドコモらが「おサイフケータイ」を推進していたが、そのApple版おサイフケータイが「Apple Pay」だと認識してもらえればいいだろう。
そしてApple Payの大きな特徴として、「セキュリティ」や「個人情報」の扱いに非常に気を使っていることが挙げられる。例えば、Apple Payでの支払いは前述のように、必ず「Touch IDによる指紋認証」が要求されるため、iPhoneが盗まれたとしても本人以外は基本的に利用できない。また、Apple Payの利用状況についてApple自身はいっさい関知しておらず、Apple Payとして登録したカード情報や履歴は同社のサーバに保管されることもなく、すべてiPhoneの端末内で完了している。一般に、こうしたユーザーの行動記録や利用動向は多くの小売店やサービス事業者が欲しがるもので、Appleのように自身の情報管理に関する権限をすべて放棄してしまうケースは珍しい。