(スタッフ)「あ、今日も採用面接ですか?けっこう応募が来てるんですね」
(店長)「そうなんだよ!うまくいけば今月は3人採用できそうだ」
(スタッフ)「でも、この半年で5人辞めてますよね?」
(店長)「それは言わないでよ……(涙)」
深刻化する人手不足、もう打つ手はないのか?アルバイト不足対策には3通りの解決策が考えられるが、慢性的にスタッフが足りない職場では、そのうちの1つが完全に抜け落ちている可能性がある。それが、アルバイトの離職を減らす「出口対策」だ。最新刊『アルバイト・パート[採用・育成]入門』から一部を紹介する。
お金さえあれば、
人手不足はなんとかなる?
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授/東京大学大学院 学際情報学府(兼任)/大阪大学博士(人間科学)
1975年北海道旭川生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、米国マサチューセッツ工科大学客員研究員などを経て、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、リーダーシップ開発について研究している。専門は経営学習論・人的資源開発論。
著書・編著に『アルバイト・パート[採用・育成]入門』『企業内人材育成入門』『研修開発入門』(以上ダイヤモンド社)など多数。
パーソルグループ
日本最大級の総合人材サービスグループ。本書においては、同社のシンクタンク・コンサルティング機能を担う株式会社パーソル総合研究所が、中原淳氏とともに大企業7社8ブランド・約2万5000人に対する大規模調査と各種分析・示唆の抽出を実施している。
「来月のシフトをいかに回すか」「目下のスタッフ不足にどう手当てするか」といった現実的な課題に追われている店長・企業は、どうしても「いかにいい人材をたくさん採用するか」に目を奪われがちです。
そこでまず誰もが考えるのは、アルバイト募集への「応募者数」を増やすことでしょう。「応募者の数を増やすこと」を考えた場合、店長・企業が取るアクションは、だいたい限られています。
誰でもすぐに思いつくのは「採用のための予算を増やして、募集広告を多く出す」という方法でしょう。これ以外にも、時給を上げたり、交通費支給を謳ったり、働く側のニーズに合わせて雇用条件を調整するような方法もあります。大きな会社であれば、テレビCMを打ったりしてブランドイメージを高めることもあるかもしれません。
人手が足りない店長ほど、
「出口対策」が足りない
とはいえ、これらの手段はすでにやり尽くされていますし、やればやるほどコストが膨らむため限度があります。また、一店長には裁量が与えられていないことも多いので、「ウチにももっと予算があれば募集広告を出せるのに…本部が現場の苦労をわかっていない!」と不満を抱いている人も多いかもしれません。
この点については個別の事情もあるので、これ以上は踏み込まないことにしましょう。それ以前に考えていただきたいのが、「本当にこれだけしか人手不足対策はないのか?」ということです。私はそうは考えていません。
アルバイト人材の獲得競争が激しい時代にあって、人手不足を解消する施策は3通りあります。1つは応募数・採用数を増やす入口対策。これについてはすでに見たとおりです。
2つめが、生産性の向上です。できる限り1人あたりの生産性を高めて、必要な人員数を減らすという努力は、会社レベルでも現場レベルでも、相当に進められていることでしょう。また、サービスの自動化・機械化などによる効率アップも、店長の守備範囲を大きく超えている部分でしょうから、これ以上は触れません。