震災から1ヵ月が過ぎ、復興支援の声も聞こえてきた。避難所生活を余儀なくされている方もまだまだ数多いし、仮設住宅の建設も進んでいないと報道されている。まだまだ緊急支援的な救援物資の提供や、ボランティアの現地活動も必要だろう。しかし、復興に向けて動き出している現地の人たちも多い。

 以前にもお伝えしたとおり、筆者は震災直後の3月12日に復興支援を目的としたプロジェクト「Tohoku Rising(東北ライジング)」を立ち上げ、現在では200名を超えるビジネス・パーソンと大学生が参加して活動している。農業、漁業から音楽、美容そして金融など、さまざまなジャンルでの復興支援プロジェクトを立ち上げている。

 「Build Back Better」をテーマに、震災前よりも活気のある東北地方の構築を目指して、最終的には100のプロジェクトを立ち上げたいと考えている。関心のある方はぜひ「Tohoku Rising」のウェブサイトをご覧いただきたい。

復興に不可欠な民間の力。
試される企業の知恵

 内閣府の試算では東日本大震災の被害額は25兆円にもなるという。阪神淡路大震災の被害額が10兆円だったことを考えても、その被害の大きさに愕然とする。これだけの被害を受けた東北地方を復興させるには、国や県などの行政だけではなく、民間の力も必要になる。そこで問われるのが企業の力、すなわちCSRのあり方だろう。

 今回の震災では、多くの企業が迅速に義援金と救援物資の提供を決めた。大企業は軒並み億単位での義援金を提供し、さらに大量の救援物資を提供している。それはそれで賞賛されるべきことだ。

 しかし、CSRの真価が問われるのはまさにこれからの行動だろう。義援金や救援物資の提供は、決断力さえあればどの企業でもできる。しかし、復興支援には知恵が必要だ。自分たちの本業を活かしてどのような復興支援ができるのか、企業の力をどこまで提供できるか、そこが問われてくる。

 メーカーの中には、東北地方の工場が大きな打撃を受けた企業も多い。そのようなメーカーにとっては工場の復旧こそがCSRそのものだと言えるかもしれない。しかし、日本の社会はそれだけでは社会的責任を果たしたとは認めてくれないだろう。自社工場の再建が地元の人々の雇用を確保し、日本経済に寄与することは理解できても、感情的にはそれ以上の貢献を求める。企業の負担は大変なものだが、CSRとは世間の空気と対峙することでもある。企業には生活者個人やNPOにはない大きな力がある。その力を今使わずして何のためのCSRなのか、そのような問いにどう向き合うか。そこにCSRの真価が問われるのである。

 すでに復興支援に向けて大きなアナウンスをしている企業も出てきた。クロネコヤマトのヤマトグループは平成23年4月から平成24年3月までの1年間、国内の宅急便の取り扱い1個につき10円を寄付すると発表。昨年度の取り扱い量は約13億個。つまり、約130億円の寄付が見込まれている。