ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経営のためのIT

業界ごとにデジタル戦略は違うのか?
注目4分野の動きをまとめる

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第66回】 2017年3月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3

フィンテックと規制緩和が
金融業のデジタル化を後押し

 金融業界ではもともとITが幅広く活用されており、デジタル技術との親和性の高い業種であるが、今後さらに急速にデジタル化が進展することが予想され、フィンテックと呼ばれる新潮流が大きな影響を及ぼそうとしている。

 フィンテックは、既存の金融機関にとって大きな脅威であると同時に、大きなビジネス機会を提供すると考えられる。また、FISC(金融情報システムセンター)が「金融機関における外部委託に関する有識者検討会」報告書で示したリスクベース・アプローチの採用は、過度に安全対策に偏らない意思決定に助力するものであり、金融機関に攻めのIT投資への転換を促し、フィンテックやデジタル技術の活用を後押しすると考えられる。

 国内ではユニバーサルバンク(金融総合路線)の流れの中、メガバンクを中心に、規制緩和で可能になったさまざまなビジネスを拡大させる戦略を指向しており、顧客の総合的な資産形成を支援するデジタルライフアドバイザリーや、データに基づく資産運用、生損保商品などのクロスセルを促進する動きが活発化している。AIやチャットボットを活用した顧客接点やコールセンターの自動応答およびバーチャルエージェント、顧客体験効率化/セルフサービス促進などによる顧客対応業務の革新も重要なテーマとなるであろう。

画像認識と分析にAIを活用する

 ここでは、電気・ガス業、運輸・情報通信業、公益・公共団体、地方自治体などを総称して、運輸・通信・公共としている。この分野は、社会基盤となる公共的なサービスを提供していることが多いため、さまざまな局面で社会的課題を解決するためにデジタル技術を活用することが期待されている。

 日本は課題先進国といわれ、少子高齢化、労働力不足、都市の老朽化、防災・防犯、地球温暖化、資源・エネルギー問題、食料自給率、過疎化・空き家問題など、課題を数え上げればきりがない。これらに対して、IoTおよび画像・音声・映像の認識技術、人工知能やロボティクス技術、ビッグデータ分析などを活用する場面が多岐にわたって存在すると考えられる。

 デジタルビジネスの戦略立案においては、IoTやAIといった技術シーズを起点とした議論に陥りがちだが、将来を見据えた取り組みには社会的課題や業界課題に着目したテーマ設定が求められる。企業は、経済・社会のパラダイムシフトに目を向け、そこから発生する業界構造の変化、顧客の課題、さらにその先の“顧客の顧客”の課題を解決するデジタルビジネスを構想化することが求められる。その際には、自社の属する業界以外の先進事例からの気づきや業種を超えた発想が求められる。

previous page
3
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


経営のためのIT

日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

「経営のためのIT」

⇒バックナンバー一覧