東北地方に甚大な被害を与えた東日本大震災の復旧や復興が少しずつ進み始めた今、それと同時に被災者の“心の復興”が大きな課題となっている。発生から16年が経過した阪神淡路大震災の被災者のなかには、今もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされる人が少なくないといい、災害後の被災者の心のケアは非常に重要だ。では、被害が甚大で広範囲にわたる今回の震災において、被災者の“心の復興”を実現させるには何が大切なのだろうか。阪神淡路大震災の際にも被災者の心のケアを行った帝京平成大学健康メディカル学部 学部長の中谷三保子教授に、今、そしてこれから求められる適切な心のケアについて話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
「怖い」気持ちはみんなが抱く感情
“異常ではない”と伝えることが心の安定に
――震災から1ヵ月以上が経過した今、被災者にはどのような心理的反応や症状が起きていると考えられるでしょうか。
まず、被災したといっても、お一人おひとりで感じ方は違います。年齢にもよりますし、被災された場所や内容(地震、津波、原発問題)、経験(過去に地震を経験したかなど)によっても異なります。ですから、災害といってもそこにまつわる人との関係性、経験、どれだけ命に関わる体験をしたかが大きく影響するため、一言ではみなさんが今どういう症状だとは言えません。各々の方に伺わなければ分かりませんし、「怖い」の意味合いや度合いも人それぞれでしょう。
以上の点は覚えておいていただきたいのですが、そのうえで、「被災」していること、「怖い」という気持ちはみなさんに共通しています。1ヵ月が過ぎた今の被災者の方の状況としては、恐怖や不安から逃れて元気になりたいと思っていても、精神的に疲弊している状況が予測されます。小さな子どもならば赤ちゃん返りをしたり、大人では誰かに依存して人との関係性を求めたり、不安で眠れなくなったり、あるいは逆にがんばりすぎてしまうという反応がみられるかもしれません。
ただし、それはみなさんに起きている自然な反応で、異常ではありません。そして、異常ではないと知ることが重要です。異常だと思うことで、パニックになってしまう恐れもありますから、周りの方はその反応は自然なものだと伝えてあげてください。少しかもしれませんが、それも心の安定につながります。