これといった名産品もなく、過疎化の進むさぬき市で町おこしプロジェクトが始まった。カネも知恵も他人任せの依存体質から脱却し、全国に誇れる土産物の開発へ。町おこしに携わった経営コンサルタントが、紆余曲折、地方都市の自立の軌跡を赤裸々に明かす。

「この度、国の予算が付くことになりました。さぬき市の名物になるような土産物のまんじゅうをつくろうと思います。ぜひとも、佐々木さんの力を貸してもらえませんか」

 2010年5月11日、呼び出しを受けて訪れた、香川県さぬき市志度町にあるさぬき市商工会の会議室で、三谷事務局長に、こう相談を持ちかけられた。

2002年、香川県東部の5つの町(津田町・大川町・志度町・寒川町・長尾町)が合併して「さぬき市」となった。

 中小企業庁の補助事業で、全国の商工会議所が各地の小さな事業者と連携して、特産品づくりを支援する「地域資源∞全国展開プロジェクト」というものがある。いわゆる町おこし事業だ。

 三谷局長の懸命の働きかけにより、このプロジェクトの予算が下り、さぬき市商工会が地元の菓子事業者と、新たな土産物開発を行うことが決まったのである。

「えっ、まんじゅうって、あの食べるまんじゅうですか?」

 三谷局長が口にした予期せぬテーマに驚いて、私はつい、そう口走った。

「さぬき市には、四国八十八ヵ所霊場の最後の三つの寺・上がり三ヵ寺があり、年間約30万人といわれるお遍路さんの多くが訪れます。しかし、この地ならではの土産物がありません。このプロジェクトで、訪れた人に胸を張って勧めることができる、さぬき市の土産物をつくりたいのです」

 三谷局長は、真剣な顔でこう言った。