プロジェクトを引き受けたものの、関係者たちにやる気も当事者意識も見られず、ショックを受けた著者。意欲も能力もある人が集まる都会の大企業とは違う、「地方の現実」に向き合わなければ、町おこしはできない……腹をくくる決意をして、最初の会合の日を迎えた。

 プロジェクトの依頼から1ヵ月後、初めての会合が、さぬき市平賀源内記念館で開催された。

 さぬき市商工会からは菓子事業者7社に加え、土産物店、食品卸、ホテル・旅館といった土産物の流通に関わる事業者。市役所からは観光課と外郭団体の観光協会、地元の特産品ということで農政課、そして今回の補助事業を管轄する経済産業省の四国経済産業局の幹部など、27名が集まった。プロジェクトの総責任者は、商工会の十河会長自らが務めることとなった。

 商工会の三谷局長からは、第1回は菓子事業者を中心に少人数で開催したいと打診されたが、私はできる限り多くの関係者を巻き込むことを提案した。皆に当事者意識を持ってもらいたかったからだ。しかし、これが裏目に出た。

 三谷局長は冒頭の挨拶の後、私を紹介してくれた。「今回のプロジェクトをご指導いただく佐々木先生です。大企業で経験を積まれた経営コンサルタントで、東京から来ていただくことになりました」

 大企業、経営コンサルタント、東京……非日常的なキーワードに反応するかのように、好奇と警戒が入り混じった視線が集まる。その雰囲気に気圧されないよう、熱意を込めて挨拶した。

「皆さんと一緒に、全国に誇れる、日本一ユニークなさぬき市土産をつくりたいと思います。力を合わせて頑張りましょう!」

 うなずいてくれる人から無表情の人まで、反応にはかなりの温度差があった。特に、後方に固まっていた菓子事業者の人たちは、視線を逸らしたままだった。「できるわけないだろ」「忙しいのに、またこんなことに付き合わされるのか」「勘弁してくれよ」……そんな声が聞こえてきそうだった。