ひどい欠陥住宅はめったにないのだが…

 さくら事務所では毎月3ケタにものぼる物件について、ホームインスペクション(住宅診断)を行っている。が、しばしばテレビで放映されるようなひどい欠陥住宅には実際にはめったにお目にかかることはない。ああいった物件を、よく見つけてくるものだなあと思う。

 かといって、なんら課題のない住宅というものもほとんどないのも実情だ。ここでいう課題とは「中小の不具合」である。

 それらは建物の「劣化」や「工事の不良」が原因だ。ほとんどのケースで、補修やリフォームなどで解決する。中古住宅を買う方はそのほとんどがリフォームを行うので、そのときについでに済ませてしまえば費用もそんなにかからないものがほとんどだ。

 いずれにせよホームインスペクションは「欠陥探し」「あら捜し」のために行うものではなく、その住宅を長く大切に使うための判断材料を提供しているというスタンスである。

「ホームインスペクションを行った結果、購入を取りやめた」というケースは、実はあまり多くない。さくら事務所が数年前に行った調査では、ホームインスペクション利用者が何らかの理由で住宅購入を取りやめたケースは17パーセントだ。この中には、住宅ローンが通らなかった、親に反対されたなどの理由も含まれており、実際はほとんどの方が契約をしている。ホームインスペクションの依頼者はみな物件を気に入っており、大きな問題がなければ購入したいと考えているからだ。

【写真C】はまだ築の浅い木造住宅の床下。なにやら水漏れの跡のようなものが見られる。

写真C

 一見、配管からの水漏れのようだが、ホームインスペクター(住宅診断士)が詳しく調べてみると…。原因は外壁からの雨漏り。

 この場合、時間が経過して壁の中が腐っていたりしたら厄介だが、幸いなことに壁の中は乾いており、外壁の補修をするだけで済んだ。この程度なら費用はそんなにかからないし、工事も比較的簡単だ。

 しかしもしこれがずっと放置されていたとしたらどうなるか。雨が降るたびに壁の中に雨が浸透し、壁の中が腐り、構造(木部)にまでその影響が及ぶと、これは大規模な補修が必要になってしまう。

【写真D】やはり床下部分。築浅の木造住宅。配管から水漏れしている。 

写真D

 これもやはり放置しておくと床下が湿った状態となり、カビや腐りの原因となるが、この段階なら配管を交換するだけで済む。