しかし競合のキヤノンは、国内では現在までのところ、同質化を仕掛けてきていない。キヤノンは、もともとインクジェットより高価格のレーザープリンタに強く、大容量タンクのインクジェットが狙うゾーンに降りてくると、単価が下がってしまうからである。

 また、リクルートの「スタディサプリ」も、大手予備校・塾は校舎と講師をなくすことができないことから、同質化を仕掛けられない。

 さらに大手スポーツクラブは、カーブスのような小型店舗に同質化すると、単価を下げなくてはならず、かつカーブスのように来室しない顧客に電話をして来室を促すサービスは、休眠会員が多い方が助かる大手にとっては、真似ができない。

市場資産を負債化したソニー損保が
お客をうまく囲い込めた理由

 ソニー損保の「やさしい運転キャッシュバック」は、安全運転をするドライバーの保険料が安くなる仕組みであり、独自の計測器によって優良と判定された顧客だけが加入してくる。一方大手損保は、大量の加入者が必要なため、優良運転手だけに限定して加入してもらうと、パイが小さくなってしまう。

 スカイマークは、近々マイルを発行するという噂もあるが、今からマイルを発行してもJAL、ANAには追いつけない。そこで強化しているのが、企業への直販である。これまで企業の出張は、出張者が自ら選んだ航空会社のチケットを取り、費用は会社が払い、マイルは個人に付与される仕組みであった。それがマイルによる顧客囲い込みの狙いであった。

 そこでスカイマークは、割安の航空券を企業に直販し、企業はそれによって総出張コストを抑えることができる。すなわち、航空会社選択の意思決定者を、出張者から総務部に代えたのである。これが機能すると、出張者は会社の命じる航空会社を使わざるをえず、顧客に蓄積されるJAL、ANAのマイルは、航空会社選択の武器とはならなくなってしまうのである。

競合企業のバリューチェーンに
上手く入り込んだランドスケイプ

 競合企業のバリューチェーンの機能を代替した典型例が、セブン銀行のATMである。ATM店舗の維持や、店舗内のATM管理にコストをかけられない金融機関にとって、セブン銀行にATM関連業務を委託した方が効率的である。たとえば新生銀行の新宿支店に入ると、中にはずらっとセブン銀行のATMが並んでおり、その光景に驚く。