「そうですね、わかってます」
「私もそう思ったんですけど、うっかり説明を飛ばしてしまいました」
「やっぱりそうですよね、なかなかわかってもらえなくて、どう説明しようか迷ってしまって……」

 などと弁解がましいことを言うばかり。彼の言葉を聞いていると弾き返すような感じがあり、こちらの言葉を深く受け止めようとしない。

 本当にわかっているのかどうか心配になり、次も売り込み先に同行した。すると、やはり前回と同様にいい加減な説明をしており、相手の質問にもきちんと答えられない。説明事項をきちんと理解していないのがあからさまにわかる。A部長が今回も説明を引き継いでその場をしのいだ。B君は一瞬「しまった!」といった表情を見せたものの、帰り道にいろいろ注意やアドバイスをしても、前回と同様に「そうですよね、わかってます」と跳ね返すばかりで、言葉がスッと心に染み込んでいかない。

「先日の様子を思い出すと、このままではとても相手の信頼が得られるわけがない。準備不足できちんと説明できない姿を私の前で二度も晒してしまったのに、深刻さがまったく感じられないんです」

 部長はこう言うと、さらに続けた。

「しかも、これまで取引のなかった会社から新たに説明依頼があり、誰が行くかということになった時、B君がなんと自ら立候補したんです。いつも説明がきちんとできないのに、なぜ大切な新規案件で堂々と立候補できるのか、真意を測りかねています。あまり強く注意しすぎると、“パワハラだ!”とすぐに訴えられる時代だから、どう対処したらいいのか……」

 と、B君の扱いに頭を悩ませている。

 似たような悩みを抱えている管理職は意外にも多い。「自信ありげなことを言うから任せてみたら、とんでもない失敗をして痛い目に遭った」「何度注意しても、言葉がスッと心に染み込んでいかないために、改善されない」「自分はきちんと仕事ができていないことに、なぜ気づかないのか」――そうした疑問の声を聞くことが多い。

 だが、このようなケースがどの職場でも見られるのには、実は心理学的な理由があるのだ。