ツイッターの採用面接で、繰り返し聞かれた質問。それは「バリュー・プロポジションは何か」だった。そこに、シリコンバレー企業にあって日本企業にないものがある。グーグル、アマゾンなど、ディスラプター(破壊者)たちが重視するものとは何か?今、破壊され始めている日本企業に欠けている視点とは?グーグル、ソフトバンク、ツイッター、LINEで「日本侵略」を担ってきた戦略統括者・葉村真樹氏の新刊『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から、内容の一部を特別公開する。落合陽一氏推薦!
※追記:本記事は著者の過去の個人的な経験に基づいた見解であり、本文中で取り上げている企業の公式見解ではありません。

ツイッターの採用面接で繰り返し聞かれた質問

 2010年夏、日本ではまだ月間アクティブユーザー数(MAU ※注1)が500万~600万人程度だったツイッター社が日本法人を設立するので面接を受けないか、とツイッターのサンフランシスコ本社に勤務する私のグーグル時代の米国人同僚から連絡があった。

※注1  ソーシャルメディアのような会員制のウェブサイトやインターネットサービス、スマートフォンアプリなどで、1ヵ月の間に1回でも利用や活動のあった利用者の数。MAUはMonthly Active Userの略。

 私は当時ソフトバンクでiPhone事業の責任者を務めていたが、ツイッターのオープン性とリアルタイム性にインターネットの未来を感じており、「ぜひ面接を受けさせて欲しい」と二つ返事で面接を受けることにした。

 最終的に私はツイッター日本法人二人目の社員(全世界では300人目)としてツイッター社に潜り込むことに成功するのだが、オファー(採用通知)をもらうまでに行った8人とのインタビュー(面接)で、多くのインタビュアーの口から発せられたのが、「ツイッターのバリュー・プロポジション(Value Proposition)は何だと思うか?」という質問だった。

 当時の私には聞きなれない言葉で最初は戸惑ったが、要は「ユーザーに提供することのできるツイッターならではの価値は何だと思うか?」という意味であった。

 当時のツイッターは、ユーザーがつぶやいた言葉などのデータを販売するというビジネスで、本格的な収益化を行っていなかった。全世界でのMAUはやっと4000万~5000万人(※注2)に届こうかという規模、米国で広告事業を始めたばかりだったため、そのビジネスモデルすら不明瞭な段階だった。

※注2 なお、ツイッターの2016年12月時点での日本国内MAUは4200万人である。

 インタビューで、バリュー・プロポジションについて答えた後に決まって聞かれたのが、「それではそれを踏まえると、ツイッターの広告事業はどのようなビジネスモデルになるべきだと思うか?」であった。