その後、いったん復帰するものの、「休んだことで、上司や同僚との距離感もさらに遠くなった」と感じた西田さん。職場の雰囲気になじめず、1ヵ月もしないうちに再び体調を壊してしまい、2度目の休職をすることになった。

 彼は自分なりに解決策を模索していくうちに、私のことを知り、カウンセリングにやって来たのだった。

「会社に戻りたいという意思はありますか?」
「はい、あります。でも……」
「でも?」
「職場のことを考えると気分が落ち着かなくなります。ソワソワします。イライラもします。戻りたいのですが、戻れないんです」

 西田さんは仕事に対する無力感と辞めた場合の不安を巡って葛藤していた。出口の見えない中で、休職期間を使った3ヵ月のカウンセリングがスタートした。

休職中の旅行が
気分転換に

 カウンセリングでは最初の休職のことから語ってもらった。一度目の休職の時、彼は旅行が好きだったこともあり、1人旅に出た。

「まずは2泊で北海道に行きました。その翌月は東北地方をぐるっと周り、3ヵ月目は九州を一周しました。まとまった休みを取れたおかげで、いい気分転換になりました」

 彼は明るい表情を見せ、その時のことを楽しそうに振り返った。旅行で沈んだ気持ちを払拭できたのは大きかったようだ。

 うつが自殺などに結びつくのを防ぐために、企業のケアは年々手厚くなっている。これは確かに必要な措置だ。なぜなら制度を活用することで救える命があるからだ。

 ところがそのケアに溺れてしまう人がいる。例えば、自由な時間を過ごすことを目的に、医師からうつの診断書をもらい、休職を繰り返す人である。

 これは一種のモラルハザードといえるだろう。生活保護といった社会保障を手厚くすることで、働かなくても食べていける、不正にもらおうと考える人が現れるように、精神疾患を利用して遊ぼうと考える人がいるのも、残念ながら事実なのだ。