孫正義氏と堀江貴文氏は2人とも既存秩序の破壊者というイメージ、かつ言動が注目を集める存在で、敵を作りがちなキャラです。しかし、その言動が世間から叩かれがちなのは堀江氏のほうで、孫社長のほうは逆に親しみやすささえ醸し出しています。その差はどこにあるのでしょうか。今回は『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』の中から、親しみやすさを演出するためにアメリカの大統領さえ練習している○○ネタについて紹介します。

「ハゲ」との悪口を見事に
笑いに変えた孫社長のすごさ

 ソフトバンクの孫正義社長は、世界有数の大富豪であり、物議を醸す発言も多く、かなり目立つ経営者です。それにも関わらず、ホリエモンこと堀江貴文さんほどの激しいバッシングや人格攻撃を受けた事もありません。その理由が分かるエピソードの中でも、特に有名なのはこれでしょう。

 ある時、孫社長は、Twitterで一般の人から「髪の毛の後退度がハゲしい」と絡まれてしまいました。しかし、それに対し孫社長はひるむことなく、「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」と返したのです。実に秀逸なユーモアです。これにより、孫社長は多くの人に親近感を与え、ハゲている人には勇気を与えたはずです。

 実は、自虐ネタというのは、偉い人が使うと、非常に親しみやすい人物になれて、嫌われないという効果があります。

 自虐ネタを言うには、自分の欠点やコンプレックスを、正直にさらけ出す必要があります。その理由は、聞き手に多少の優越感に近い感覚を持ってもらうことで、自分のポジションを低くする事が出来るからです。だからといって、あまりに重すぎるコンプレックスを言うと、誰も笑えなくなってしまうので、その塩梅が重要です。

 簡単なのは、「背が低い」「太っている」「老化した」という、ありがちな身体コンプレックスをギャグにする事です。その他、「時々、遅刻する」とか、「話が長い」などと、他人から指摘される欠点をイジる事も簡単な方法です。

 自虐ネタを簡単に作る方法として、「私の欠点に免じて許してください」というフォーマットがあります。

 例えば、あるイベントで思ったより集客がなかったとします。その時に、中年の主催者が冒頭で「僕がもう少し、若くてイケメンだったら、もっとお客さんが来たんでしょうけど、すみません」と明るく謝ったらどうでしょう。

 そうすると、お客さんは「客の集まりは悪いけど、話の面白そうな人がやっているな。どんな内容かな?」と、まあまあ興味を持ってくれる可能性があります。もし、自虐ネタを使わなければ、お客さんは心の中で「人気のない、変なイベントに来ちゃったな」と、マイナスのイメージを持ったまま終わっていた可能性も高いでしょう。