人生は仕事が全てではない

「創造価値」が何らかの活動、主として働くことを通して、人が「この世界に」もたらす価値であれば、「体験価値」とは様々な人生体験を通して、人が「この世界から」受け取る価値です。

 私たちは働くことに意味を見出せなくなる時があります。

 仕事で大きな失敗をし降格になったり、日陰の部署に異動をさせられたり、会社都合で退職させられたり、そんなキャリアの挫折を経験すると「働きがい」「働く意味」を感じられなくなり「生きる力」が萎えてきます。「創造価値」が急激に劣化する状況です。

 人は人生の多くの時間を仕事に費やしますが、かといって仕事は人生の全てではありません。

「創造価値」が劣化しても、「体験価値」があります。この世界には、自然があり、芸術があり、愛があります。仕事以外のことでも「生きる意味」を満たすことができ、生きる力を充電することができます。

 苦悩してしまうと思考は狭まり、挫折した自分を否定することに意識が集中します。

 自分に、自分の人生に、自分の生きるこの世界に「もうダメだ」と失望します。そんな時こそ、自分の人生に対する信頼を回復させるために、この世界から受け取れる価値(体験価値)があることを思い出し、自身の人生を肯定して欲しいのです。そうした多角的な人生観が私たちの心を強くしてくれますし、逆境に負けない心を育んでくれます。

 フランクル心理学は「逆境の心理学」であり、「人生を肯定する心理学」でもあります。「体験価値」があることを、いつでも忘れないでください。

◇引用文献
※1-2『夜と霧』(V・E・フランクル[著]、霜山徳爾[訳] みすず書房)
※3『フランクル回想録』(V・E・フランクル[著]、山田邦男[訳] 春秋社)