試行錯誤を繰り返し、
トラフィックを増やせ

板東 LINEとC CHANNELの成功法則を教えてください。

板東浩二(ばんどう・こうじ)/株式会社NTTぷらら代表取締役社長。1953年、徳島県生まれ。徳島大学工学部電子工学科を卒業し、77年に日本電信電話公社(現NTT)入社。NTTぷららの社長としてプロバイダー事業、映像配信事業の「ひかりTV」を成功させ、現在、会員600万人、売り上げ800億円規模の企業へと成長させた

森川 まず、時流に乗れたことでしょう。2011年、LINEをリリースした当時はガラケー全盛期で、iPhoneの市場が急激に伸びていても、多くの競合が「iPhoneは儲からないからガラケーをやるべき」と言っていたんです。

 でも、僕たちはガラケーの市場で出遅れていたので、11年に「スマートフォンに賭けよう」と社員の半分をスマートフォン担当にして一気に突っ込みました。これが、一番早くできた要因かなと思います。またC CHANNELに関しては、確実に「スマートフォン×動画」の時代がくる、と思っていました。

板東 森川さんは、短期間で非常に多くのユーザー数を集めますよね。

森川 インターネットの世界で一番重要なのは、トラフィックの多さなんです。インターネットビジネスの収益源は、広告、課金、ECの3つが大きいんですが、トラフィックが増えれば、どのビジネスもうまくいきます。

 なので、まずはトラフィックを増やすことに集中しました。単純にダウンロード数じゃなく「1日に何回使うか」も考えましたね。週に1回しか使わないようじゃダメなんです。1日1回でもダメ、1日に何回も使う、というのが重要です。それが多くの人に広がると、ものすごいトラフィックになります。

板東 トラフィックを増やすコツってあるんですか。

森川 アッと驚くコツなんてものはなく、極めて普通のアプローチです。“普遍的なニーズを具現化する”ということだけを考えていました。単純な話で、価値がないと皆さんに使ってもらえませんから。いつも「人にとって、何が意味あることなのか、どんな価値があるのか」みたいなことを考えていましたし、今も考えています。

板東 その好例が「スタンプ」ですよね。当時、メッセージのトラフィックが増えていて、ユーザーは1日に何通、何十通とメッセージを送っていたから、だんだん文章をポチポチ打つのは面倒くさくなる。だから「スタンプ」だった、と。

森川 あと、重要だったのはスピード感ですね。やっぱり、何でもやってみないとわからない部分があるんです。徹底的に仮説は立てるんですが、それでもわからない。だったらまずはサービスをリリースして、その中からユーザーのニーズをかぎとって、失敗したものはパッとやめて、人気があれば何でウケてるのか分析して、アップロードを繰り返してニーズに合うようにしていく…。そのサイクルを速く回すほうが重要かな、と。

板東 C CHANNELも、よくできたビジネスモデルですよね。モデルさんやタレントさん(「クリッパー」と呼ばれる)が、ヘアメイクや料理やファッションの情報を動画で発信して、ユーザーは好みが合う情報を得れば「私のファッション雑誌」ができあがる、という。

森川 ここでも、スピード感を持って試行錯誤を繰り返しています。例えば、動画に女性が出て「今日は銀座でおいしいお寿司を食べました!」とやると、ユーザーさんのなかには「この子、パパにごちそうしてもらったんだよね」と反感をお持ちになる方もいらっしゃいます。でも、普通の子が「ファストフード店で新メニューを試しました」とやると「こんな動画になんの意味があるの?」とか、こっちにも厳しい人たちがいて…(笑)。その結果「まず人が出ないものからやろう」と、メイクやマッサージなどの叩きどころがない動画をつくったんです。ここが最初の入り口でしたね。