時代に合わせて、働く環境も最適な形に向かっている
キャンパスができたばかりの頃、オリジナルキャンパスでは、多くの部屋が個室だった。個室で静かに考え事をしたり、プログラムを書いたりすることができるというのが大きな魅力になっていた時代があったのだ。
ところが、今は違う。これも時代の流れなのかもしれない。個室から、どんどんスタッフは出て行き、大きな部屋で仲間と仕事をすることが増えているという。自分の席を持たないフリーアドレスで仕事をしている社員もいる。メルジャック氏は言う。
「個室で一人で仕事をするのではなく、みんなで一緒に仕事をしていく。そういう流れになってきていますね」
移動中に、そんなふうに広い部屋で仕事をしている社員の姿を見ることができた。隣に座って、談笑しながら仕事をしている。部屋の隅にはコーヒーが用意され、お菓子も自由に食べることができる。
「食べ物はとても重要です(笑)」
なんだか“いわゆる外資系”っぽくないのである。個室からスタッフが出て行くようになったのは、ここ数年の変革と同じである。個室を出て、仕事の垣根を取り払う。積極的に仲間と協業する。これまでにない取り組みをすることで、グロースマインドセットを実現させていこうという狙いがあった。
第6回で評価制度や求める人材がカルチャー変革で変わった、という話を書いたが、働く環境や働き方も変わっていった。同じ働き方で何も変わっていないのに、新しい発想をしろ、新しいことを考えろ、というのは無理な話だ。
もとよりアメリカで個室がもてはやされた時代は、隣の部屋のスタッフとも話さずにメールでやりとりをしていたという。1日、誰とも話をしない、誰とも会わない、なんてこともあったらしい。
働き方を変えよう、とコラボレーションが歓迎されている今はまったく違う。積極的に部屋を出て行くようになった。そして会社も、個室ではなくオープンスペースに社員が出て行きやすいよう環境を整えていった。日本マイクロソフトのコーポレートコミュニケーション本部長の岡部一志氏が教えてくれた。
「昔のソフトウェア製品の開発は、事業部単位の縦割りが進み、社内であるのに独立した形で開発が進められていた時期がありました。しかし、今のクラウドのサービスというのは、いろいろなものとつながるためにあるわけです。やっている人もつながっていく。オープンなんです。開発思想やビジネスモデルとカルチャーや人の働き方というのは、連動していかないといけないということです」
だから、個室はどんどん減っている。一方で増えているのが、オープンな環境。フリーアドレスのスペースだ。時代に合わせて、働く環境も最適な形に向かっているのだ。