マイクロソフトのキャンパスツアーで、誰もが訪れる場所は

「The Commons」はキャンパスの中心的な存在で、たくさんのレストランやカフェ、デバイスショップやリペアショップなど、さまざまな店舗が軒を連ねている。イベントスペースやミーティングスペースもあって、まるで巨大な商業施設のような趣だった。

 レストランは、ハンバーガーからメキシカン、イタリアン、エスニックに中華や和食など世界各国の料理がフードコートのような形で出店されており、購入することができる。食事は1日5万食が出るという。

 日本の大企業の社員食堂といえば、だだっ広いフロアに同じテーブルとイスがずらりと並んでいるイメージが強いが、マイクロソフト本社ではそうではない。

 2層に分かれ、陽当たりのいいスペース、ワイワイがやがやしたスペース、かすかに暗いスペース、ブースで仕切られたスペースなどが広がるレストランフロアは、さまざまな色やデザインのテーブルやイス、ボックスシートなどが用意されており、社員は自由に座って食事を楽しむ。

米マイクロソフト本社で、「効率的な働き方」を取材してきたThe Commons内のレストラン

 フロアのところどころに置かれているのは、コンビニエンスストアのペットボトル売り場のような大型冷蔵庫。いろいろな飲み物を自由に無料で飲むことができる。社員は、思い思いに好きな料理を選び、ドリンクを手にシートに座っていく。

 ちょうどお昼時にこのレストランを見ることができたのだが、印象的だったのは、いろいろな国の人たちがここで働いていることが、一目でわかったことだ。アメリカのソフトウェア会社の本社といえば、やはり白人が多いのかと思いきや、むしろ少数に思えた。

 中国系やマレー系など、アジア出身と思える人たちも多く、ヒスパニック系、インド系、中東系、アフリカ系の姿も。まさに多国籍な人たちが働いていることが一目でわかった。だからこそのレストランのラインナップだったのかもしれない。

 レストランに併設されたイベントスペースでは、有志の社員とおぼしき10名ほどが、アカペラを披露していた。これが、プロ級にうまい。周囲に座っていた人たちは、自然に演奏を楽しみながら食事をしていた。

 マイクロソフトのキャンパスツアーで、誰もが訪れる場所がある。ひとつは、92号棟だ。キャンパスの建物への出入りは、もちろんセキュリティチェックが入るが、ビジターでも訪れることができる場所もある。

 そのひとつが、92号棟なのである。ここは、マイクロソフトのIDなしで入館でき、ビジターセンターで創業以来の沿革を見たりすることもできる。オフィシャルストアもあり、マイクロソフトのグッズを購入できる。

 そしてもうひとつ、誰もが訪れるのは、「オリジナルキャンパス」と呼ばれる、最初にできた建物である。今は6つの建物があるが、すべてがつながっている。

米マイクロソフト本社で、「効率的な働き方」を取材してきた本社で最初に造られた「オリジナルキャンパス」

 建物はX形にレイアウトされており、部屋の個室の窓からは緑豊かな中庭をのぞむことができる。庭には小道や池もある。かつては、ビル・ゲイツ氏も、ここに部屋を持っていた。また、考え事をするのに、よく庭に出て行ったという。前出のメルジャック氏は語る。

「庭を造ったのは、静かな環境の中で仕事ができるようにという考えだったようです。昔はひとつのソフトに2、3年かけていましたから。明日できたら、この池に飛び込むなんて言って、実際に飛び込んだマネージャーもいたそうです。もちろん今はそんなことはありません(笑)」