「答え」を教えるのではなく、「答え」を引き出す

 メンバーから報連相を受けるときも同じです。
 まず、黙って聞く。「答え(=解決策)」がわかったとしても、それを口にするのをグッとこらえましょう。そして、下図のように質問を投げかけて、メンバーに話してもらいながら、「答え」に自らたどりつくように思考を深めてもらうのです。つまり、「答え」を教えるティーチングではなく、相手から「答え」を引き出すコーチングを基本にすえるわけです。

ダメなマネジャーは部下に「教えよう」とし、優れたマネジャーは部下から「学ぼう」とする。

 もちろん、新人など業務経験の少ないメンバーには自ら考える「材料」「知識」がありませんから、最初はきちんとティーチングする必要があります。しかし、経験を積んだメンバーにティーチングを行ってしまうと、彼らから「自分で『答え』を見つける力」を奪ってしまうという結果を招くのです。

 ここで、こんな疑問を感じるマネジャーもいらっしゃるでしょう。
「そうは言っても、コーチングは非効率ではないか?」と。たしかに、メンバーが自分の力で「答え」を見つけるのをサポートするコーチングには、それなりの時間がかかります。「答え」を教えて、その通りにやってもらうティーチングのほうが“手っ取り早い”のは事実でしょう。

 ですから、「会社は学校ではない。仕事には決められた納期があるのだから、最速で最高の結果を生み出すために、マネジャーが『答え』を教えてどんどん仕事を前に進めてもらうべきだ」と主張するマネジャーの気持ちもよく理解できます。

 しかも、それでなくてもマネジャーは忙しいですから、コーチングに時間をかけるのが難しいという現実もあります。丁寧にコーチングしたいと思っても、次のアポイントの時間が迫ってくれば、そうも言っていられません。そんなときには、手っ取り早くティーチングせざるをえないこともあるでしょう。