では、こうした状況に、役員が退路を断つ覚悟で立ち向かってきたかというと、そうではなかった。本来なら役員が責任を取るべき窮状なのだが、誰も明確な責任を取っていない。

 前中計は新野社長が、前々中計は遠藤会長が、社長就任前にトップの右腕として立案し、CEOとして実行したもので、両者に責任があるのは明らかだ。

 しかし、「温厚な社風のNECでは上にモノ言う人は少ない。特に新野社長は敵をつくらない人柄で、責任を問いにくい」(NEC関係者)というのが実態らしい。

 あるNEC幹部は「売り上げが縮小したのに、執行役員の数はさほど変わらなかった。目標を掲げて、あとは現場に任せ切りにする癖があった」と話す。

 NECには執行役員が49人いる。執行役員1人当たりの売上高は日立のわずか21.7%しかない。

 このように幹部がぬるま湯に漬かっている一方で、NECは社員に対しては大ナタを振るってきた。

 人員削減の数は01年度に4000人、02年度に2000人、そして12年度には1万人に上った。

 自分には甘く、他人には厳しい経営者が、人心を掌握できるはずがない。

 さすがに、3000人のさらなる人員削減を発表した今年1月には、「経営の結果を厳しく問う」として役員の信賞必罰を徹底する方針を同時に示した。

 だが、この方針すらも「即退陣を求められないように現役員が予防線を張った」(NEC関係者)とみられてしまうほど、社員と役員の間に埋め難い溝がある。