ホンダが歯がみして悔しがる思いは、トヨタを大株主に持つKDDIにも通じるところがあるだろう。すでに、KDDIはコネクテッドカーでトヨタと連携しているからだ。

 しかし、今回の提携で激震が走ったのはトヨタ・ソフトバンクの競合ばかりではない。むしろ、トヨタグループの企業群が受けた動揺の方が大きかったといえるかもしれない。

 目下のところ、トヨタは資産の入れ替えに躍起になっている。ソフトバンクとの協業対象でもあるモビリティーサービスやAI(人工知能)など新領域への投資が相次いでいるため、「トヨタへの貢献を生まない不稼働資産は切り離していく方向」(トヨタ幹部)なのだ。

 その典型が、8月のいすゞ自動車株式の売却だ。2006年にトヨタといすゞは資本提携を結んだが、ディーゼルエンジンの協業が頓挫し提携解消に至った。

 もっとも、両社がビジネス上の成果を生んでいないことは長きにわたって公然たる事実だったので、いすゞにとって解消は寝耳に水だった。そのため、「トヨタ本体が本気でグループ整理に着手しようとしている」(アナリスト)と株式市場では受け取られている。

 ものづくりに強みを持つ堅実なトヨタが、挑戦的な企業文化を背景に世界のテクノロジー企業の“投資家”と化したソフトバンクと組んだ。従来ではあり得ない、対照的な企業文化やビジネスモデルを持つ両社の急接近は、トヨタグループ内部に「身内であっても、トヨタ本体とギブ・アンド・テークの関係にない企業は切り捨てられる」というメッセージを植え付けるには十分な効果を発揮した。

 ショック療法ともいえる荒業に打って出るくらいに、「100年に1度」の自動車業界の変革に臨む豊田章男・トヨタ社長の焦燥感は強いということなのだろう。

中国大攻勢の“切り札”

 そして今、トヨタの焦燥感を増幅させる懸案事項が持ち上がっている。世界の二大自動車市場で繰り広げられる米中貿易戦争の長期化だ。そのリスクを最小化する手段としても、ソフトバンクとの提携は大きな意味を持つ。

 日米首脳会談で自動車関税の引き上げは見送られたものの、11月の米中間選挙の結果次第では、米国が対米投資など日本への強硬姿勢を一層強めるかもしれない。