クルマのサブスクリプションは
「リース」とどこが違うのか?

 だが、ここで疑問を感じる読者がいるかもしれない。クルマのサブスクリプションというのは、「リース」の言い換えにすぎないのでは?

 そうではない。リースは利用者を特定のクルマに縛りつけるが、サブスクリプションではさまざまな車種に乗ることができる可能性がある。ポルシェのウェブサイトには、「あなたのニーズが変わったら、アプリを使って簡単に車種を変えることができます」と書かれている。利用者は1つの車種ではなく、そのメーカーのさまざまな車種を対象とする利用契約を結ぶのだ。

 もう1つの違いは、サブスクリプションでは、クルマを持つことに伴う厄介な側面(登録、保険、保守)は気にしなくてもよい。リースだと、保険は自分で入る必要がある。

 また、カー・サブスクリプションの多くは、月ごとに契約することができる。『スレート』誌のクリスティーナ・ボニントンは「1年のうち、仕事中心の10ヵ月は電車やバスを使い、あちこち出かける機会の多い残り2ヵ月はサブスクリプションでクルマを利用する、といったこともできる」と述べている。

 契約が終わったとき、サブスクリプションならそのクルマを買わなくてもよい。私はこれは大きな利点だと思う。クルマを良好な状態に維持することについて、自動車メーカー側が気を遣ってくれ、利用者は気にしなくてもかまわないのだから。

 クルマを所有することは厄介でお金がかかる。そう考えるのはミレニアル世代だけではない。

 大学を卒業したばかりの頃、私が乗っていた中古車は預金口座に仕掛けられた時限爆弾みたいなもので、故障したらすぐに残高が底をついた。米国の自動車ローン市場は現在、1兆ドル規模に膨れ上がったあばれ馬だ。これからの10年で、その大部分はサブスクリプションと各種サービスの提供へと移っていくと私は踏んでいる。

(本原稿は書籍『サブスクリプション』からの抜粋です)

〈バックナンバー〉
第1回 フォーチュン500に入り続けている企業の共通点とは?
第2回 急成長企業のビジネスモデルはここが違う

ティエン・ツォ(Tien Tzuo)
Zuora創業者兼CEO
セールスフォース・ドットコムの創業期に入社し、CMO(最高マーケティング責任者)やCSO(最高戦略責任者)を歴任。同社での経験から「サブスクリプション・エコノミー」の到来をいち早く予見し、2007年にZuoraを創業しCEOに就任。Zuoraは、従来のプロダクト販売モデルからサブスクリプション・モデルへのビジネスモデル変革と収益向上を支援するSaaSプロバイダで、世界に1000社以上の顧客を持つ。2018年4月にニューヨーク証券取引所に上場。