安楽死や尊厳死はさまざまな議論があり、第19回(「死ぬ間際の医療方針の事前指示制度が機能しない可能性を考える映画」)で取り上げた終末期の事前指示書(ACP)も含めて、論者によって言葉の定義が異なります。

 そこで、最初に言葉を定義しましょう。ここでは田中美穂・児玉聡の『終の選択』に沿って以下のように定義、分類します。

(1)「積極的安楽死」 医師が致死薬などを積極的に処方することで、患者の命を積極的に終わらせる行為。
(2)「消極的安楽死」 医師がまだ 行われていない生命維持治療、あるいは現在行っている治療を中止する行為。
(3)「医師による自殺ほう助」 医師が薬物を処方・提供することで、患者の自殺を助ける行為。

 このうち、積極的安楽死については、オランダ、ベルギーが法制化しており、2014年製作のドイツ映画『君がくれたグッドライフ』でベルギーが登場します。

 映画では、男性の若者、ハンネス(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)が妻や知人たちと連れ添い、ベルギーを目指して自転車旅行に出掛ける場面から始まります。

 しかし、ハンネスには思惑がありました。ハンネスは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で筋力を失いつつあって余命は半年程度と見られており、悪化する前にベルギーで安楽死しようと計画したのです。

 旅行中、ハンネスの思いは同行した友達に伝えられますが、全員が一様に反発。しかし、ハンネスが自転車を十分にこげなくなっていく様子を見て翻意していき、ハンネスは妻や家族、知人に囲まれつつ、医師から安楽死の処置を受ける設定になっています。

 ベルギーでドイツ人が安楽死できるのか詳しく分かりませんが、旅行中では「(注:ハンネスが病気と)闘わずにあきらめた」という周囲の反対意見と、「寝たきりが嫌なんだ」というハンネスの思いを交差させることで、生きることの重要性、自らの判断で死ぬ是非、残された人間の悲しみなどを考えさせる内容となっています。