自由貿易破壊は「政治の真空状態」でどこまで進むか?企業に傍観の余裕なし

ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)は、脱落した人々の疎外感に付け入る。政治的リーダーシップの真空状態が続く中、民間企業が「われ関せず」を決め込むならば、脱グローバリゼーションの加速や不確実性、不安定性の高まりを招きかねないと、前米通商代表部(USTR)代表のマイケル・フロマン氏は警鐘を鳴らす。

 2018年、さまざまな政策分野の中でも、とりわけ貿易が「破壊」された。

 かつては古くさく、専門的で、正直なところいささか退屈だった貿易絡みの事案が、今では新聞の1面や雑誌の表紙の見出しに躍る。米ケーブルテレビ局HBOの(人気風刺番組)「ラスト・ウィーク・トゥナイト」で、(コメディアンの)ジョン・オリバー氏がコメディー調のドキュメンタリーに取り上げるまでになった。

 伝統的に自由貿易協定(FTA)に反対だった層が今や一転してその価値を褒めそやし、自由貿易を尊重しているとは言い難かった中国、ロシア、フランスを含めた国々が、グローバルな貿易体制の擁護者に名乗りを上げている。

 とはいえ実際、どの程度の「破壊」だったのかを検証してみることは重要だ。

 ドナルド・トランプ米大統領は、確かに12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したが、残る11の署名国はその骨子を温存した協議を独自に重ね、米国にも将来の復帰に向けての門戸を開いている。

 そして、より多くの国々が参加への関心を示していることは、TPPがやがて当初に見込んでいた規模を優に超えて発展する可能性を示唆するものだ。