トランプ「非常事態宣言」で歴史的な転機迎える大統領と議会の攻防
米国のトランプ大統領が、メキシコとの国境に壁を建設する予算確保のために、非常事態を宣言した。実は、今回の攻防からは、大統領と議会との関係が大きな転機を迎えていることが見て取れる Photo by Keiko Hitomi

米国のトランプ大統領が、メキシコとの国境に壁を建設する予算確保のために、非常事態を宣言した。異例の強硬手段に至った党派対立の厳しさに注目しがちだが、大統領と議会との関係が大きな転機を迎えていることも見逃せない。議会の意向を軽視する大統領の増長は、壁の建設に反対する民主党はもちろん、共和党にとっても深刻な問題だ。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)

3つの点で対立を先鋭化させた
トランプ大統領の非常事態宣言

 2019年2月15日、米国のトランプ大統領が、非常事態を宣言した。公約であるメキシコ国境への壁の建設について、議会が要求通りの予算を認めないのに業を煮やし、大統領権限で予算を付け替える道を開くためだ。

 非常事態宣言は1つの問題を解決した一方、3つの点で対立を先鋭化させた。

 解決したのは、2019年度の予算である。トランプ大統領は、非常事態宣言を通じて壁の予算を確保するのと引き換えに、2019年度の予算に署名した。壁の建設費用を巡るトランプ大統領と民主党の対立は、2019年度末からの35日にわたる政府機関閉鎖の原因だった。2019年度予算の成立により、少なくとも2020年度が始まる2019年10月までは、政府閉鎖の再来は避けられる。

 先鋭化した第一の論点は、壁の建設費用だ。非常事態宣言でも、壁の予算が確定したわけではない。非常事態宣言の正当性は、これから法廷で争われる可能性が高い。仮に裁判所に差し止められた場合には、再び予算の問題が議会に戻ってくる。

 それでなくても今回の非常事態宣言では、トランプ大統領が構想する壁の建設費用が全て工面できたわけではない。さらなる予算の積み増しが必要となるわけだが、トランプ大統領が非常事態宣言という異例の措置を講じた以上、これまで以上に民主党は態度を硬化させそうだ。

 第二に、壁の建設費用を巡るトランプ大統領と民主党の対立が深刻化すれば、他の政策課題にも混乱が広がりかねない。特に米国では、2019年の夏から秋にかけて、法定債務上限の引き上げが必要になる。債務上限の引き上げに手間取れば、米国のデフォルト懸念が浮上し、株式市場が混乱した2011年の悪夢が蘇る。