2020年の大統領選挙に向けた動きが活発になってきた米国で、巨大企業のもたらす弊害が争点になっている。やり玉にあがっているのは、日本でもしばしば報じられるフェイスブックやグーグルといったハイテク系の大企業に限らない。米国の独占禁止法である反トラスト法の修正など、実際の制度改正には時間がかかりそうだが、巨大企業に対する風向きの変化が、企業行動に影響を与える可能性は軽視できない。(みずほ総合研究所 欧米調査部長 安井明彦)
大統領選を見据えて盛り上がる
巨大ハイテク企業の分割議論
米国で、2020年の大統領選挙に向けた動きが活発化している。特にトランプ大統領の再選阻止を至上命令とする民主党では、党の指名候補を選ぶ予備選挙に向けて、候補者たちが遊説などの選挙運動に力を入れている。
盛り上がってきた民主党の論戦のなかで、多くの候補に共通するのが、巨大企業に対する批判である。とりわけ目立つ論客がエリザベス・ウォーレン上院議員であり、真っ先にやり玉にあげられたのがハイテク企業である。
2019年3月8日にウォーレン議員は、フェイスブック、アマゾン、グーグルの社名をあげて、ハイテク企業の分割を提案した。巨大化したハイテク企業は、経済、社会、さらにはロビイングや献金が威力を発揮する政治の分野において、強大な力を持ちすぎている、というのがウォーレン議員の主張である。
ウォーレン議員は、いわゆる「プラットフォーム」を提供する巨大企業に対し、事業の分割を迫る法改正を提案している。ウォーレン議員の提案が実現すれば、年間売上高が250億ドル以上の企業は、自社が提供するプラットフォームに参加できなくなる。
たとえばアマゾンのように、オンラインで市場を運営する企業は、その市場では自社の製品を販売できなくなる。引き続き自社のプラットフォームに参加しようとする場合には、その事業を切り離す必要が生ずることになる。