名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを紹介する。今回は第4回。これまでに脳動脈瘤(りゅう)だけでも3000例弱を治療し、女性外科医としては紛れもなく世界一の藤田医科大学(旧・藤田保健衛生大学)脳神経外科の加藤庸子教授を紹介する。

未破裂脳動脈瘤手術
女性外科医では世界一

藤田医科大学(旧・藤田保健衛生大学)脳神経外科の加藤庸子教授
藤田医科大学(旧・藤田保健衛生大学)脳神経外科の加藤庸子教授

「脳動脈瘤が破裂するかどうか、危険性を見極めるには、大きさよりむしろ動脈瘤の壁の厚さに注目します。極限まで薄くなった壁の内側で血流が渦巻いているのが見えますね」

 まるで血の詰まったシャボン玉。モニター画面に映し出された瘤は、いつ破裂してもおかしくない状態に見えた。

 執刀医である加藤庸子先生の周囲には、手術助手やオペナース、麻酔科医や臨床工学技士ら10人近いスタッフに加え、海外からの留学生など数名の研修医も交じり、手技にじっと見入っている。息を止め、最適な位置と角度を定め、クリップをかけると瘤は瞬時にしてしぼんだ。

 オペ室に安堵(あんど)の空気が流れる。

「ちゃんと見えた? 質問はありませんか」

 先生が留学生に英語で話しかけると、彼はうれしそうにいくつかの質問をした。手術後、一緒にお茶を飲みながら話を聞くと、30歳で既婚。イランで妻と子どもが待っているという。

「加藤先生は手術の腕も素晴らしいが、人間性も素晴らしい。アジアやアフリカなど、脳外科医が全くいない国々で、脳外科手術を教えながら手術する活動をされている。尊敬しています」と、にこやかに答えてくれた。

 先生が得意とする手術は「クリッピング手術」だ。