名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師……。医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、リスペクトする医師の、仕事ぶりや医療人としての仕事哲学などを紹介する。今回は第1回。「内視鏡外科手術のパイオニア」と呼ばれる金平永二メディカルトピア草加病院院長を紹介する。
臓器がリラックスしている
傷が残らない内視鏡手術
「日本初のフリーランス外科医」の経歴から『平成のブラック・ジャック』の異名を持つ金平永二先生。大学病院という強力な後ろ盾を捨て、裸一貫、外科医としての卓越した腕前だけで勝負することにしたその手術を、一度見学させていただいたことがある。
患者は高齢。身体への負担が極力小さい手術を受けたいと、金平先生を頼った。病名は「胆のう腺筋腫症」。胆石が次々とできてしまう、激痛を伴う疾患に侵された胆のうを「単孔式内視鏡手術」で全摘するという。単孔とは、たった一つの穴という意味で、へそを縦に2.5㎝切開して穴を開け、オリジナルの手術器具「エックスゲート」を挿入して行う、傷痕が残らない手術だ。予定所要時間は90分。
手術室には筆者以外にも3人ほど見学者がいた。日本に並ぶものなしと言われる手技を学ぼうと、日本各地からやってきた医師たちだ。
「すごい」
隣に立っていた1人が、呆気にとられたようにつぶやいた。
「そんなにすごいんですか?」
聞き返すと、
「普通の医者の3倍は早いです。しかもきれいです」
執刀する手元を凝視したまま、答えてくれた。