自由化後に顧客離脱を食い止められず

 最も大きな理由は、16年4月に電力小売りが全面自由化され、顧客離脱を食い止められなかったことにある。

 東電は電力小売り全面自由化が始まる前の16年3月末時点で、一般家庭向けの「電灯」分野は約2700万件の顧客基盤を有していた。自由化が始まると、最大のライバルである東京ガスをはじめ、新規参入組に次々と顧客を奪われた。顧客基盤は今や2000万件にまで落ち込んでしまった。

 それまで地域独占というぬるま湯に浸かっていた東電EPは、営業力が弱点だった。しかも東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で、ブランドイメージは大幅に悪化していた。

 電力自由化の対抗手段として、日本瓦斯やLIXILグループ、ベンチャー新電力であるパネイルなどと提携。ガスや住宅機器、AIなど電力以外の商材を組み合わせ、付加価値のあるサービスを展開して勝負する方針を打ち出しはした。

 しかし、東電EPの営業部隊と提携先と設立した合弁会社のサービスでカニバリが起きるなど迷走。東電関係者によれば、特にLIXILやパネイルとの提携は鳴かず飛ばずで、目標未達の公算が大きいという。

 では、業績面の責任だけがトップ交代の理由かといえば、そうではないようだ。

筆頭株主である政府の影

 積極的にアライアンスを推し進める東電EPの“大方針”は、17年5月に策定された新々総合特別事業計画に基づくもの。この計画には、東電の筆頭株主で政府が50%出資する原子力損害賠償・廃炉等支援機構が大きく関与した。

 政府、つまり経済産業省の意向が働いている。政府が筆頭株主になって東電を事実上国有化して以降、東電のお目付役として経産官僚を送り込んできた。

 今回の更迭は、小早川HD社長というよりは経産省の思惑が絡んでいると、多くの業界関係者が見ている。

 秋本EP新社長は、管理部門が長く「当たり障りない人物」(東電関係者)。「経産省は省の言うことを聞くトップを据えたかったのだろう」と業界関係者は読む。

 もっとも、地域独占ビジネスだったため、層が厚い別の部門に比べ営業畑の幹部人材は不足している。営業を主導する人物が見当たらなかったというのもあろう。

 営業力増強の戦略を伴わないトップ交代であるなら、それで勝ち抜けるほど電力自由化後の競争は甘くはない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)