楽天の三木谷浩史氏や、サイバーエージェントの藤田晋氏ら、いまなお続く大企業がこの時期に多く誕生し、旧ネットエイジの西川潔氏などによって、「ビットバレー構想」が持ち上がった。
東証マザーズなどの開設が後押しとなり、2000年には過去最高規模の200強の企業が上場を行うなど、ブームは絶頂にあった。
だが、同時期に同じく株高が続いていた米国で、突如株価の暴落が発生した。日本では携帯電話販売代理店業の光通信の不正が明るみに出るなどの事件によって、ITバブルは一気に消沈した。
その後、ベンチャーキャピタルなどによる投資や、グリーなどの携帯ネットコンテンツを手掛ける企業の存在感もあり、ブーム自体は盛り返したものの、06年にライブドアが証券取引法の違反容疑で強制捜査されたことに端を発する「ライブドアショック」がブームにとどめを刺した。
新興企業に対する上場審査基準の甘さなどを指摘する声もあり、ブームが去った後に残ったのは、「ベンチャーは怪しいもの」という社会的な不信感だった。
新世代の台頭が
ベンチャー業界を生まれ変わらせる
だが、景気が上向く中で、そうした時代を生き抜いてきた企業が成熟し、新たな世代の起業家を生み出すようになったのが、現在のベンチャーブームである。
「いまの起業家は優秀で、人間味豊かな人が多く、知識も豊富」。松本氏らと共にネット創生期を歩んできたLENSMODE.comの加藤順彦氏は、以前との違いを強調する。
それこそ、いまやコンサルティング会社や一流企業を狙うような「本流」の若手が、続々とベンチャーを目指すようになっている。
バブル以降に生まれ、収入ではなく人間関係や自己実現を求める「乾かない世代」と呼ばれるいまの20代は、かつての一獲千金を狙うギラギラした起業家とはまた異なり、社会課題を解決する手段としてのベンチャー企業を選択することも多い。
携帯からパソコン、スマートフォンとデバイスが続々変わる中で、子供のころから接しているデジタルネーティブであることも、次世代が台頭する理由だ。
さて、現在のベンチャーブームが続くかと問われれば、こうした次世代の活力がある限り、イエスと答えられるだろう。
もちろん、既にキャリアを積んだ社会人にとっても、違う世界へ踏み出しやすい環境がある。キャリアプランが多様化する中で、就職と転職に、起業という第三の選択肢も定着するだろう。
図「日経平均株価とベンチャー投資額の推移」の通り、ベンチャー市場は、経済の動向に左右されてきた。今回の「4.0」も、不景気に転じれば終息するのではと、危ぶむ声も多い。
だが、起業家の志が大きく変質しているいま、「ブーム」は「定着」へと大きく進歩するはずだ。