とはいえ、自宅の住所や電話番号を名刺に記載するには抵抗を感じる。また、少しでも都心の好立地にオフィスを構え、イメージや信用力のアップを図り、事業を有利に進めたい──。こう考えるのが普通だ。

 そんなときに便利なのが「バーチャルオフィス」だ。最低限必要な住所や電話番号、FAX番号などをレンタルできて、郵便物の転送サービスなどもある。シェアオフィスとの違いは、物理的なスペースの提供の有無。来客スペースはあるものの、あくまで最小限の機能だ。また、シェアオフィスは会員同士で交流を図るといったイベントが一つの売りだが、バーチャルオフィスではそうしたサービスは基本的にない。

 この分野をけん引してきた最大手はリージャス、その次がサーブコープという会社で、いずれも外資系だ。しかし、最近ではオフィス需要の追い風を受け、着実に契約社数を伸ばしている日本企業もある。そのうちの1社がMOORだ。

 同社の土本真也社長は、リーマンショックの影響で勤めていた家具ベンチャーが破綻状態に陥ったことを契機に2009年に独立。翌年からバーチャルオフィスのワンストップサービスを始めた。下図のように、1年目の契約社数は57社だったが、18年末には1万社を超えた。

 その中には、自宅でアプリ開発会社を1人で立ち上げ、有名アプリを生み出して10億円以上で事業を売却、再びバーチャルオフィスで新規事業を立ち上げた猛者もいるという。

追い風に乗り売り上げ倍へ