これらは、方向性としては相反するものといっていい。クラウドでゲームを処理するということは、クライアント側に大きな処理能力を求めないということである。コンソールゲーム機であろうと、ポータブルであろうと、ゲームをストリーミングで動画表示すればいいというのが基本的な形であって、クライアント側の機器の処理性能が高い必要はない。

 一方、次世代プレイステーションのコンセプトは真逆だ。強力なハードウェアを持つクライアント機器による、いわば今までのプレイステーションの延長線上の戦略である。1つの会社の中でこうした複数の方向性の異なる事業を計画するのは、リアル・オプション的な意思決定として、不確実性の高い事業には最適なやり方と言えよう。

ダイナミックに変化していくはずの
「次のソニー」が見えてこない

 エンタテインメント事業や金融事業が好調なのはいい。しかし気になるのは、ソニーらしさがダイナミックに変化していくものであるとすれば、「次のソニーが何なのか」が見えてこないことだ。

 2000年代半ばにシャープやパナソニックの経営がV字回復する中で、ソニーだけが一人負けといわれていた時期があった。しかし、このころ社長に就任した平井氏は赤字が続くソニーで、他社が研究開発投資を抑制するなか、唯一研究開発投資を増やしていた。その後、再びシャープやパナソニックの経営状況が悪化したことを考えると、V字回復とは将来への投資を減らし、将来の収益を先取りしただけに過ぎないといえる。

 平井社長時代のソニーは、毎年モデルチェンジが当たり前だったデジタルカメラを数年にわたってつくり続けるビジネスモデルに転換したり、テレビ事業をEMSを活用して開発と生産を分離し、ソニーが得意なところだけソニーが行うというやり方にして黒字化を図ったり、新しいビジネスもいくつか育てることができた。

 残念なのはモバイルの落ち込みだろう。平井体制の良さは、経営陣がソニーの周縁部分から選ばれたことだったかもしれない。平井氏自身、レコード部門の出身であり、当時副社長だった吉田氏はインターネットプロバイダのSo-netの社長、CSOの十時氏はソニー銀行の設立者と、ソニーの本業といわれたエレキから距離のあるメンバーだった。イノベーションは常に周縁部分から起きることを考えると、エレキを客観的に、俯瞰的に見ることができる経営陣がそろっていたのが、よかったのかもしれない。