世界的に多大な影響を与え、数千年に渡って今なお読み継がれている古典的名著たち。そこには、現代の悩みや疑問にも通ずる、普遍的な答えが記されています。しかし、そのような本はとんでもなく難解で、一冊しっかりと理解するには何年もかかるものもあります。本連載では『読破できない難解な本がわかる本』(富増章成著)から、それらの難解な名著のエッセンスを極めてわかりやすくお伝えしていきます。(イラスト:大野文彰)

「絶望」ってどんな病気なの?

 本書は非常に難解な文章から始まります。「人間は精神である。だが、精神とはなにか。精神とは自己である」。いきなりこれですから意味がわかりません。

 ここでいう「自己」とは今生きている私自身のことです。だから、本当の自分であろうとする自分から目をそらしている場合が「絶望」のはじまりです。自分をごまかしている感じでしょうか。

 また、キルケゴールによると、誰でも「絶望」に陥るとされます。というのは、人間は一生、自分自身とつきあっていく存在だからです。他人ではなく自分に対しての関係がうまくいかずに、自暴自棄になったり、投げやりになったときなどに「絶望」が生じるのです。キルケゴールは、この絶望こそが、人間にとってもっとも恐るべき「死に至る病」であるといいました。「絶望」するから「死ぬ」という意味ではありません。

 「絶望」とは死にたいけれども死ぬこともできずに生きていく状態のことです。肉体の死をも越えた苦悩が「絶望」です。

 つまり、生きながら死んでいるようなゾンビ状態のことを「死に至る病」と呼んでいるのです。本書は、この「絶望」に絞り込んだ一冊になっています。この世に「絶望」についてこれ以上詳しい本は存在しないのかもしれません。

 キルケゴールは絶望の種類分けをします(絶望の諸形態)。[1]無限性の絶望、[2]有限性の絶望、[3]可能性の絶望、[4]必然性の絶望です。