「机上の空論」と化した
ある銀行の中期経営計画
始まる前から実現不可能だと分かっていた中期経営計画が、想定通り未達に終わった──。少し前に中計の最終年度を見届けたある地方銀行の幹部は、無力感に襲われた。
その地銀の中計とは次のようなものだった。
日本銀行による異次元金融緩和の導入以降、金利の低下によってその地銀の貸出金利息収入は右肩下がりが続いていた。本業である融資ビジネスで得られる収益の柱にヒビが入り続けていたというわけだ。
そのダウントレンドをはね返そうと同行が数年前に立てた中計では、期間内に貸出金利息収入が微増に転じる絵を描いた。ただ、そこには重大な矛盾が存在していた。
貸出金利息収入は「貸出金残高×貸出金利回り」で求められるので、融資の「量」と「質」の両面によってその値が決まる。
ただ、貸出金利回りというのは市場金利に大きく左右される面が強い。特に日銀の異次元緩和が始まって以降は、その低下は個別銀行の営業努力ではあらがい難いものがあった。
そうした事情を踏まえて、中計の実現可能性に疑問を抱いた冒頭の地銀幹部はある試算を行った。貸出金利回りの低下が今と同じペースで続くと仮定して中計期間中の推定値をはじき出し、中計に書かれていた貸出金残高の目標値にその値を掛けてみたのだ。