金融庁の遠藤長官が不満を募らせる
「逃げ切り頭取」の無言の退場
「無言のうちにどんどん頭取が交代している。一体どうなっているんだ」
銀行の監督官庁である金融庁の遠藤俊英長官は、最近そんな不満を周囲に漏らしている。
今年1月、遠藤長官は全国の地方銀行の頭取が居並ぶ意見交換会の場で、あるメッセージを発信した。銀行の陣頭指揮を執るべき頭取が自らの任期中に経営改革を実行に移すことを求め、どのように後任にバトンタッチをするのか、明示してほしいと要請したのだ。
「ゾンビ銀行#1:国を挙げての『ゾンビ銀行』退治の幕が開いた」で説明した通り、銀行業界は今、構造不況の真っただ中にある。「一言で言えば、『責任を持った経営をしてくれ』ということ」(金融庁幹部)だ。
それを聞いてか聞かずか、今、地銀の頭取交代が相次いでいる。6月21日時点で今年になって全国の地銀103行のうち15行で「銀行の顔」が変わった。しかも、大垣共立銀行(岐阜県)の土屋嶢前頭取(現会長)の在任期間26年を筆頭に、そのうちの過半数が8年以上の長期政権を敷いていた。
各銀行の境遇やトップ交代の理由はさまざまだが、遠藤長官の目には「責任を持った経営」を投げ出して無言のままトップの座から去る「逃げ切り頭取」と映る存在がいたのだろう。
そんな「責任不在の経営」に甘んじる銀行トップを追い詰める制度見直しを、遠藤長官率いる金融庁は進めている。それが「早期警戒制度」の見直しだ。
従来重視してきた「足元の健全性」だけではなく、「将来の収益力」も銀行に強く求める方針を表明。必要があれば、その観点から「伝家の宝刀」である業務改善命令などの行政処分を銀行に下せるようにした。
それに当たって具体的に、今後約5年以内に「コア業務純益(投資信託の解約損益を除く)が継続的に赤字になる」ことが予想される、といった条件を明示したのだ。
その「伝家の宝刀」の切っ先が向かうのはどこか。銀行業界は早くも戦々恐々としている。そこで今回ダイヤモンド編集部では、それを占うための決定版となる全国111銀行を対象とした「銀行危険度ランキング」を独自に作成。まずはワースト20を抜粋した。