理念や価値観が企業と人材とをつなげる基礎にはなりますが、一方的に理念を理解させたり、唱和させたりするだけで、社員が企業とのつながりを強く感じられるとはいえません。

 また、日本企業の多くの企業理念は、日本特有の文化背景や、日本人にしか正しく理解できない価値観を土台にしています。ですから、そもそも価値観の土台が異なる海外の社員や新入社員からすると、ただ教育を受けても、心から理念を理解し共感できるものではありません。

社員に理念を理解してもらう
2つの工夫とは?

 そもそも組織開発とは、「理念」「価値観」「文化」など“形のないもの”への共感を促す取り組みです。これ自体は世界中の企業で行われており、自然なことですが、社員の価値観や考え方に対して変化を促すものである以上、「多少なりとも抵抗感を覚える人がいるのは当然だ」と考えることが大切です。

 つまり、この企業理念は「特定の時代(創業時)の、特定の国(日本)の、特定の環境(まだ企業が小さかった)において共感を呼ぶもの」という客観的な視点を持てば、「現在の海外現地社員や新入社員にとって共感できるものなのかどうか」が見えてきます。

 企業理念は、特定の状況に基づいた価値観の1つであり、理念教育のやり方を間違えると、価値観の一方的な押し付けになりかねません。時として、社員のネガティブな反応もしっかり受け止めながら、長い時間をかけて取り組みを続ける必要があるのです。

 また結局のところ、社員は「企業の理念や価値観が自分の仕事にどう関連するのか、どう役立つのか」が見えてこない限り、企業理念の理解に本気で取り組むことはありません。そのためには、併せて2つの工夫が必要です。