第三の場所が、心の健全さを保つ

“人生の中心は自分”という生き方、働き方をめざしてみよう守屋 実(もりや・みのる)
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年にミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、エムアウトをミスミ創業オーナーの田口弘氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。2010年に守屋実事務所を設立。設立前および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。自ら投資を実行、役員に就任、事業責任を負うスタイルを基本とする。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。

東松:一方で、危機感も持ったほうがいいというか、私、今31歳なんですけど、もっと下の世代って、漠然とした危機感を持っていたりするんですよね。AIに仕事が奪われるのではないかとか、年金が破たんするのではないかとか……。そうしたときに、今から一歩を踏み出して、将来のために何かを探さないと見つからないとも思いますが、どう思われますか?

守屋:たしかに、そうかもしれませんね。

東松:その際に、僕が推奨したいのは、同じ休みでも自分なりの意味や目的を持って動いてみると、きっと何かみつかるのではということです。

守屋:どういうことですか?

東松:たとえば、僕は2015年に初めてキューバに行ったのですが、その理由はアメリカと54年ぶりに国交を回復する前の社会主義国としてのキューバをこの目で見たいと思ったからです。当時、国民の平均年収が2万4000円と言われていて、行く前は正直「貧しい国」だなという印象でした。ところが、実際に行ってみると正反対で、出会う人々が皆、単なる旅人の僕に、ご飯をご馳走してくれたり、ダンスパーティーを開いてくれたりと、何かしらのおもてなしをしてくれたのです。これまでのどの国よりも、キューバの人々の心はとても豊かだなと感じました。それで気が付いたのは、「世の中にはいろいろな生き方、選択肢がある」ということです。今は、そういうことを世の中に発信していくことを、もっとやっていきたいなと思っています。

守屋:実際に行ってみないと見えない、わからないことってありますよね。それは、とても貴重な体験でしたね。

東松:人それぞれ、どんなことでもいいのでしょうが、自分が踏み出しやすい方向で、一歩を踏み出すためのアクションをちゃんととるということが大事なのかなと。僕の場合は、それが海外旅行だったわけですが。

守屋:一歩を踏み出せないで、ずっと同じ場所で足踏みしているような人もいますけど、それだと前に進むのがこわくなるんですよね。同じ場所で足を動かしているほうが安全・安心なので。

東松:一歩を踏み出せた人は、一歩目より二歩目、二歩目より三歩目がラクなのが分かります。でも、一歩を踏み出したことがない人は、永遠に0歩、半歩をやっているというか。

守屋:そうですね。

東松:一昔前までは、会社と自宅の往復だけで人生を終えていたかもしれないですけど、今はその間に、趣味の集まりやコミュニティという第三の場所(サードプレイス)とか第三の時間みたいなものがどんどん出てきていますよね。そうした会社以外にも一歩を踏み出せる場所があるのに、足踏みしている人が、まだまだ多い気がしますね。

守屋:僕の本のコラムで登場していただいた元リクルートの伝説の営業ウーマン森本千賀子さん(株式会社morich代表取締役)も、第三の場所を持つことの重要さをおっしゃっていますが、家と会社の往復だと、時には息苦しいときもあるかもしれません。でも、自分が必要とされることを実感できる第三の場所があれば、心のバランスを健全に保つことができるし、それが明日への活力にもなるということです。東松さんも本の中で、「ランチは社内で、夜は社外の人と会う」と書いていましたね。

東松:そうですね。社内の人とだと、最終的にはお酒が入るとどうしても愚痴とか悪口になっちゃうんですよね。だから、夜はなるべく社外の人と会うようにしています。