アマゾン、マイクロソフト、グーグルの米大手IT3強が火花を散らすクラウドビジネス。業界王者のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)は日本の自動車業界に力を入れている。AWSテクノロジー担当バイスプレジデントのマルコ・アルジェンティ氏を直撃し、成長の秘訣と戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
クラウド移行で約70%のコスト削減
イノベーションも加速する
――AWSはクラウド事業者のシェアトップです。
今年のAWS売上高の見通しは308億ドル。ですが、ITの市場全体で見ると市場規模は4兆ドルもあります。クラウド事業者としてわれわれは最大規模ですが、未来はまだまだ明るいと考えます。
顧客がクラウドに移行する主な理由はコスト削減。従来の自社サーバーを置き換える場合は最大で90%、平均で約70%のコスト削減につながります。これは非常に強力です。もう一つの理由は、企業がイノベーションを起こすためのスピードを上げること。第三の理由は、製品の市場投入までの時間の短縮です。ですから、コストが削減でき、イノベーションがもっと加速して商品の市場投入も速くなる。これがクラウドを顧客が選ぶ理由です。
――AWSの成長のドライバーは何でしょうか。
ご存じの通り、(クラウド)コンピューティング(計算処理)は最も重要な成長分野の一つです。現在急速に成長しているAIや機械学習アプリケーションの背後にあるのもコンピューティング。従来のような古典的なPCを使う処理からサーバーレスまで、複数の処理方法があります。コンピューティングこそがわれわれのビジネスの推進力。例えば機械学習など特定の作業に特化したものをはじめ、現在200近いサービスを提供しています。
また、分析やIoT、機械学習といった、データ駆動型アプリケーションも大きな推進力の一つ。データベースの領域は成長が著しく、AWSのサービスの中でも最も急成長したのがデータベースサービス「Aurora」です。Auroraは標準的な MySQL データベースと互換性があり、効率的に管理できるデータベースで採用事例が急増しています。ここまで速く普及した理由は、がちがちに縛られてビジネスとの相性の良くない伝統的なデータベースとは違って“自由”を与えてくれるからです。一晩待たなくても予測を実行できるなど、信頼性と商用パフォーマンスを兼ね備えたデータベースを自由に利用できます。
もう一つの新しい傾向はデジタルトランスフォーメーションです。企業はビジネスの在り方を変革したいのです。好例が独自動車大手のフォルクスワーゲンで、AWSを活用してサプライチェーンを構築しました。フォルクスワーゲンのような企業は、IoTと機械学習が早期に結び付くと考えていて、例えば多くのセンサーから収集したデータを、機械学習を活用して分析し、効率的なエネルギー管理をしようとしています。IoTとAIを結び付けて現実世界の問題を解決しようというのが最近のトレンド。コストを削減して新たなビジネスチャンスを生み出そうとしているのです。IoTでデータを収集し、AIで分析する過程を最適化したい。これも現在の大きな成長ドライバーです。