マンション価格は高止まり
それでも売れてしまう理由
首都圏マンションの平均価格(1戸当たり)は不動産バブル期だった2008年が4775万円だったのに対し、18年は5871万円と2割以上も上昇している。それなのに売れている。なぜか。
まず、価格が上昇している理由について見てみよう。
かつては郊外や地方で大量に建てられたのに対し、最近の新築マンションは関東圏の「都心」「駅近」という好立地に集中している。そうした場所は地価が高いので、比例してマンション価格も上がる。
さらに建築単価が上昇し、価格を押し上げている。マンションで主流の鉄筋コンクリート造り(RC造り)の平均単価は08年の20万6100円/m2から18年には26万3100円/m2と3割近く上昇している。20年の東京五輪・パラリンピック需要などで資材価格が高騰したり、人手不足で人件費が上昇したりしているからだ。
08年9月のリーマンショック後に一時落ち込んだマンション価格は、こうしたことを背景に再び右肩上がりになった。価格が高騰しているのに、デベロッパー各社はマンションを売り切っている。なぜ売れるのか。
理由の一つとして各社がそろって挙げるのは、共働き世帯の増加による世帯年収の上昇である。
共働き世帯は08年と比べて約200万世帯も増えている。「DINKs」(子どもがいない共働き世帯)とか「パワーカップル」(高年収の共働き世帯)などといわれる層も含め、30代前後で高所得になる世帯は少なくない。彼らが職場から近い都心の駅近に集まってくるため、需要が衰えないというわけだ。
さらに、利便性を求めて郊外から都心に移り住む高齢者世帯も増えている。彼らは自宅売却などで比較的資金に余裕があるため、少々値が張っても高機能の新築マンションを購入できる。
アベノミクスの異次元金融緩和を背景に、旧住宅金融公庫基準金利が08年の3.57%から18年には1.31%まで下がるなど、住宅ローン金利も空前の低金利になっている。それもあって借入限度額は2000万円近く拡大し、高額でも買いやすい環境が生まれている。
現在の価格上昇は、1980年代のバブルのような地価が上昇し続ける“土地神話”や、リーマンショック直前の特別目的会社(SPC)を使った“不動産流動化スキーム”などによる投機的なマネーの動きとは違い、手堅い実需が支えている。
とはいえ、高値を付けたマンションがある一方で、値下げによる価格勝負を仕掛けてくるデベロッパーや出物がもっとあってもよさそうなものだ。それが出てこないのはなぜなのか。