格差

【北海道】【新潟】さびる土建王国
8月に廃業する道内職人の絶望

 50年近く大工を営んできた北海道の1人の職人が70歳を目前にしたこの8月、職人人生に終止符を打つ。子どもたちから会社を継ぐ申し出も受けたが、廃業を決めた。「同じ苦労をさせるわけにはいかない」と、公共工事で経済を回してきた「土建王国」北海道での商売に絶望していた。

 10年前から道内では建設業の廃業ペースが速まっている。「リーマンショックよりも、『コンクリートから人へ』をうたう民主党政権になったダメージが大きかった」と東京商工リサーチ北海道支社情報部部長の立花克則。同政権下で公共事業が激減。その後、自由民主党が復権して公共事業を増やしたが、それでも廃業の勢いは衰えなかった。

 土建王国は保守の自民党が勢力を持つエリアだ。この4月に行われた道知事選挙において実は地元経済界は国土交通省北海道局長だった和泉晶裕の擁立に動いた。人物評は非常に高かったが、「工事を発注する北海道開発局長も経験したキャリアであり、建設業との縁が深過ぎる」とも言われた。

 建設業界を背負う大物政治家もいない中、結局は永田町の意向に負けた。自民党は内閣官房長官の菅義偉がプッシュする、夕張市長を務めた38歳の鈴木直道を送り込み、彼が当選した。

 業況はいいだけに道内も全国同様、倒産数が減ってはいる。近年倒産した業者を見ると、およそ半分は資本金1000万円未満か個人企業。平均負債額は1億~2億円あたりで推移しており、小さい。つまり、倒産・廃業共に大多数が小さな下請け業者で起こっている。