ワークライフバランスという言葉に違和感を持つのは、「ワーク」と「ライフ」が対立する概念として扱われていることによるものです。これは、西欧、特に古代ギリシャ哲学やキリスト教的文化のもとでの「労働は苦役である」という考え方・宗教観をベースにしたもので、多くの日本人にはなじまないのではないか、と私は捉えています。日本的な感覚では、働くことと人生は対立するものではなく、むしろ「ワーク」と「プライベートな時間」が合わさって「ライフ」が成り立つという考え方の方が、より自然に感じます。
また、近年はインターネットの普及などにより、家庭や外出先でもいつでも働ける環境が実現しています。働くこととプライベートは相互に作用し合うようになり、この2つを区切ることは難しくなりました。
私が最もしっくりきているのは「ワークライフハーモニー」という考え方です。プライベートだけ、仕事だけではなく、ワークとライフ(プライベート)の両方を充実させることで、ライフ全体を充実させることができ、人生や暮らしが豊かになる。これがワークライフハーモニーの考え方です。
もう1つ、ワークライフバランスを考える上で考慮したいのは、互いのバランスを取る時間の単位です。1日ごとにワークとプライベートのバランスを取りたいと考える人もいれば、1週間の中でバランスが取れていればよいと考える人もいるはずです。中には数ヵ月単位でバランスを取って、しばらくは集中して長時間働いてもいいから、長い休暇をしっかり取りたいという人もいます。
バランス期間の長さは、本来は人によって異なり、効率よく創造性を持って働けるやり方も違うはずです。全体でバランスが取れていればよいはずなのですが、日本では個人の意向を無視して杓子定規な時間軸でワークライフバランスが決められがちな点も、おかしいと思います。