実際、私自身、外資系企業で働いていた頃からバランス期間は自由に決めたいと思っていましたし、かつて部下に勤務時間の長さを気にして大丈夫かと声をかけたところ、「平日は仕事に集中して、週末、しっかり時間を取って野球ができれば、僕はその方がいいんです」などと言われたこともあります。

 今まで組織の都合だけでプライベートがないがしろにされてきたことの反動として、「何時までしか働いてはいけない」「何曜日はノー残業デー」など、決まりがなければ際限なく仕事の時間が増えてしまう、という事情も分からないではありません。しかし、本来は働く人の裁量でバランスを考え、組織は本人の意向をできるだけくみ取りながら、プロジェクトや仕事を回すようにするのが理想だと思います。

「働き方改革」の問題は
給料を上げるだけで全て解決する

 ここでワークライフバランス、働き方改革について、理系っぽく、数式を使って考えてみましょう。会社が欲しいのは業績です。これを働く人の成果、アウトプットと同義と捉えて、アウトプットはどのように生まれるのか、因数分解してみます。

 アウトプットは、社員の生産性と働く時間とのかけ算で表せます。生産性は能力と集中度、あるいは社員のやる気に依存します。では能力とは何か。単純作業の量、創造性の高さ、その両方の和が能力とここでは考えます。このうち単純作業の部分はIT化、機械化により比率が少なくなっていき、一方、機械には置き換えられない創造性の部分は重要性が増していきます。

 創造性の高さは、学習時間と集中度・やる気に比例します。創造性を高めるには、学習による継続した能力開発が必要ですが、学習時間はそう簡単に増やせないので、代わりに集中度・やる気を高める必要があります。集中度の向上は創造性向上だけでなく、生産性にも影響します。