通知についても、ユーザー行動の流れの合間、次の段階へ進むところでタイミング良く表示させると効果的です。誰にどういう通知を出すのかが大事で、押しつけになっても利用を止められてしまうので、「続けて使いたい」と思わせる体験づくりがカギとなります。

 これまでは、スマホ「アプリ」のUXが課題になってきました。しかし今後はスマホを入口としたサービス、例えばフライトや宿泊などのサービスの使い勝手やユーザー体験が大切になってくるでしょう。これからのアプリはモノ、商品ではなく、コト、サービスにつながります。アプリを中心にユーザー体験が提供されるようになったとき、よく見ると「おもてなし」できていないサービスはまだまだ多いのです。

アプリは完成品をつくるのではなく
常にアップデートすることが大切

 もう1つ、今後考えるべきなのが、コンシューマー向けだけではなく、社内やBtoB向けのアプリやサービスでもUXの視点を持つことです。社内開発や外注して開発したアプリを勤怠管理など業務のために導入したときに、情報システム部門の社員でない一般社員でも「社内のアプリは使いにくい」と判断できるような時代になってきています。これはスマホやウェブで日頃からGoogleカレンダーなどのサービスを使う社員が増えるなど、利用者の目が肥えたからです。

 これまでのIT担当者は、システム導入の際に機能や安定性、運用のしやすさを重視してきましたが、今では使いやすさや生産性も重視しなければなりません。スケジュール管理などでも、個人が普段使っているものがスタンダードになる傾向にあります。GoogleがGmail、Googleドライブなどのサービスを、コンシューマー向け、学生・教職員向けに無料で提供しているのは、これらのサービスをスタンダード化することで企業向けの有料サービスである「G Suite」を利用してもらおうという戦略なのです。

 メルカリなどの人気アプリでは、ユーザーにどう使われているか、どうすれば使われるかをベンチマークして、常に完成度を高め続けています。サブスクリプション時代には、クロスセル、アップセルにつながる考え方が求められます。そこでユーザーのロイヤリティが上がるようにする必要があるのです。

 アプリの世界では、企画だけでヒットが出せるとは限りません。また、もしヒットアプリができたとしても、リリース後も常にその内容を進化させる必要があります。それなのに企画側と開発側が分断されていると、反復的な開発・改善・リリースの流れがつくりにくくなります。

 昔は「企画から言われたことだけやる」というエンジニアが多かったのですが、今ではエンジニアの中にもより良いアプリにしていこうという人も出てきています。ただ、まだまだ「言われたものをつくる」というエンジニアも多く、その点は課題だと感じます。

(クライスアンドカンパニー顧問 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)