もう1つ、UXの良し悪しを見分けるポイントに「ユーザー登録フォーム」があります。アプリを提供する側は、ユーザー登録フォームからできるだけ多くのデータを取得しようとしがちですが、取得したデータを本当に活用できているのかは疑問で、中には「いつか使うかもしれないから」と無駄な情報を入力必須項目として登録させている場合もあります。

 しかし、入力項目が多くなればなるほど、ユーザーは途中で登録を諦めて、離脱していってしまうもの。ユーザーの離脱と入力項目の量を、どうトレードオフするのかは、フォーム設計では常に課題となります。

 この課題を解決するため、ユーザーの入力の手間をできるだけ簡略化しようと、カメラを使った情報入力の仕組みも取り入れられるようになりました。例えば名刺管理アプリやクレジットカード決済の場面で、カメラで撮影すれば文字を認識して、入力を補助してくれるというアプリは増えています。ほかの分野のアプリでも、同じように登録ができればよいのに、と思います。

サブスク時代に重要になるのは
機能の数より「使われているか」

 従来のソフトウエアは買い切りモデルが主で、そこでは機能があるかないか、その数の多さが評価の対象となっていました。しかし、近年はサブスクリプションモデルでソフトウエアが提供されるようになっています。これからは「その機能が使われているかどうか」が問われる時代です。

 サブスクリプションモデルは、月額・年額などでソフト、アプリやサービスが利用できる、初期費用のハードルが低い仕組みです。ですから、使いにくければ他のものに乗り換えられてしまいます。ソフトやアプリ購入の考え方は、サブスクリプションモデルの登場で大きく変わりました。

 無料アプリを入口に、会員制や購読型でサービスを提供するサブスクリプションサービスでは、「AARRR」と呼ばれるフレームワーク(モデル)がサービス成長のための指標・戦略として用いられます。これはユーザー行動の流れを「Acquisition(新規ユーザー獲得)」「Activation(利用開始)」「Retention(継続利用)」「Referral(他ユーザーへの紹介・推薦)」「Revenue(収益化)」の5段階に分けて頭文字を取ったものです。

 ユーザーにスムーズにこの流れに乗ってもらうため、サービスを提供する側は「本当に必要な情報」を「簡単に」登録できるようなオンボーディング(ユーザーを定着させるための最初のステップ)を設計することが大切です。その意味でも、前述したユーザー登録フォームの仕組みや項目は重要になってくるわけです。