大成建設 村田誉之社長Photo by Masato Kato

「海外より国内工事」「不動産開発より既存の建設事業強化」の色が強かった大手ゼネコン大成建設。2018年度からスタートした3カ年の中期経営計画では、海外強化などを目標に掲げて方針転換を進めている。戦略を語る村田誉之社長の言葉には、好業績と裏腹に危機感がにじむ。(聞き手/ダイヤモンド編集部 松野友美)

ポスト五輪の仕事量は堅調
利益率は不透明

――2025年以降の業況をどう見ていますか。

 一時、「20年の東京オリンピック・パラリンピック以降は仕事がどうなるんだ」と随分言われましたが、多分仕事(量)は堅調にあると踏んでいます。大阪の万国博覧会などもあって、全体的に仕事が急に減ることはないでしょう。

 それと、建設業は世の中の景況の影響を受けるのがちょっと遅れてきます。過去、バブルの後に景気が悪くなってもそのまま仕事はしばらく続きました。ただ、最近、局部的にコスト競争が出てきている。利益率を今と同じように確保できるかどうかは、少し不透明かなと思っています。

――どのようなコスト競争ですか?

 各社が、(受注を)取ろうと思ったものについては、かなり突っ込んでくるというところが見られる。割と早い段階で物件を取りにいく、いかないの判断をしている。

 要するにそういった価格競争という局面が見られるようになってきた。ちょっと前まで仕事がふんだんにあったせいの反動もありますけど。仕事がない頃は、入り乱れて、何社もいった(入札する価格を下げてまで受注を取ろうとした)。そういうのが一時なかったんですよね。だからそれなりの価格というのは通用したと思うんですけど、最近は局部的に厳しくなってきました。

――高さ390mの日本一高いオフィスビルとなる予定の常盤橋B棟(東京駅前常盤橋プロジェクト)はぜひ取りたい案件ですか?

 “超超高層”なので業界は注目している。実績を作る意味でも。超超高層は挑戦したいという思いはありますよね。

――受注残がかなり先まであるので「おなかいっぱい」と言う会社もありますが。

「おなかいっぱい」という表現は、私はあんまりしたくない。私はしたことない。それは失礼な言い方だと思います。

 うちはどの案件もチャンスがある限り挑戦するスタンスでいる。

バブル崩壊の認識
「時差」があった

――過去の不況期に何を考えましたか。今の経営に生きる学び、教訓はありますか。

 平成景気と言われていたとき、東京・六本木で副所長をやっていたな。バブルは「泡」だからいつかなくなっちゃうでしょ? でもそのときはみんなずっと続くと思っていたんだよね。

 バブル期にうちの会社が最高の営業利益を出したのは1993年3月期。今考えると、バブル崩壊って言われても、崩壊したんだってピリオドを打てていなかった気がするんですよ。ゼネコンって、景気の波が来るのが遅い。景気が悪くなっても、発注されている仕事をずっとやるから。決算の利益も上がる。で、うちの会社はそのときに少し対応が遅れたんじゃないかっていう気がします。社内のムードもね。その後に、ダダダダダーッと悪くなった。「時差」があってね、自分も認識が足りなかった。

「ゼネコンは世の中の動きから遅れているんだな」というふうに思ったのが30代後半。これがすごく印象に残っている。みんなが浮かれてた。私も自分の家をね、「今土地買わないと買えなくなりますよ」って言われて、えらい高い買い物をしたよ。

 いつまでもいいっていうのはないでしょう。そういう危機感みたいなものを、社内みんなで共有しなきゃいけないというのがありますね。

 心配させようというんじゃなくて、そうならないようにやっておこうよと言いたいんです。海外を今やらなきゃいけないでしょうと。製造業だって生産拠点を移したり、海外の企業と戦ったりしている。日本のゼネコンってドメスティックな産業でずっとやってきたけどそれでいいのか、あるいは海外から(プレーヤーが)来るかもしれない。覚悟を持ってチャレンジしていかなくてはいけません。