竹中工務店 佐々木正人社長竹中工務店 佐々木正人社長 Photo by Masato Kato

土木は別会社で建築に特化している大手ゼネコンの竹中工務店は、スーパーゼネコン5社の中でも唯一の非上場会社。他社が海外でローカル企業の工事や不動産開発を進める中で、日系企業の案件を中心に受注し、他社が海外M&Aを急ぐのを横目に国内の地方創生やまちづくりを研究している。今年3月に就任した佐々木正人新社長に異色の戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 松野友美)

原価を下回る価格になるほど
採算面で厳しいものが出てきた

――この先の景況感や競争状況を教えてください。2025年ぐらいまでは「好調が続くだろう」という見方のゼネコンが多いようですが。

(この先も)プロジェクトはあるだろうと思っています。プロジェクトの数はある中で、入札の価格の感じからすると、全体的に競争が少し厳しくなっています。最近、1000億円前後の超大型プロジェクトが4~5件あったが、おそらく最終的に原価を下回る価格になるような採算面で厳しいものもあったと感じている。

――工事量よりも利益率に大きな変化が出ているということですか。

「これからある程度の安定した受注を続けるためには、大型プロジェクトを厳しくてもやってかなきゃいけない」みたいな発言をされる方もいるでしょうが、基本はやっぱり、単体の工事がプラス(黒字価格)にならないとつらい。

 われわれは協力会社を抱えているので、マイナス(赤字価格)での工事はかなり厳しいと分かった上で受注するのは、社会的にもあるべき姿ではないと思う。極力避けていきたい。

 私どもの原価を抑える努力が足りないのかもしれませんけれども、そういう厳しい局面に入り始めているのかなということを、先々のプロジェクトで感じ始めています。

――先々というのは?

 今議論されている大型プロジェクトは、20年か21年ぐらいに着工して、そこから竣工まで3年っていったら、24年ぐらいまでのもの。そこら辺まで続くプロジェクトが、そういう状況に入り始めている。

――高さ390mで日本一高いオフィスビルになる「東京駅前常盤橋プロジェクトB棟」(27年完成予定)が業界で注目を集めています。原価が割れるとしても受注したい?

 だから、それが悩みですよね。シンボリックなプロジェクトなので「赤字でもやる」という考え方はあるかもしれない。ただ、プラスマイナスゼロならまだしも、赤字は社会的におかしい。技術や生産性の向上につながるなら、万が一マイナスに近くても、会社としてやる意味がある。

 それでもなんとか、ゼロにはしたいですね。協力会社にまで赤字をというのは、もう耐えられないことなので。社会的におかしいと思いません? スーパー(ゼネコン)にしたら「これ赤字商品やけど、客寄せにして残りでもうけようか」っていうのはなきにしもあらずなんだけどね。