ゼネコン業界2位の鹿島は、古くから青函トンネルなどに代表される技術の難易度が高い土木工事をこなし、建築でも超高層ビルのパイオニア的存在だ。2015年に就任し「現場第一主義」を掲げる押味至一社長は、人手不足を含め業界の課題とどう向き合い、どんな未来を描いているのか。(聞き手/ダイヤモンド編集部 松野友美)
ロボットを使うことが
若い人にとっての魅力に
――人手不足が深刻です。施工を効率化するために技術開発をどのように進めていますか。
生産性向上は、国内で徹底的にもっとやらなきゃいけないですよね。「職人がいなくなるのをどうするんだ?」「担い手が育ってこないのに、現状をどう維持するんだ?」「週休2日制を入れなければ、若い人はこの業界には入ってこない」って話になると、どうしたって生産性を上げないと駄目。
「工期を延ばしていただけますか」と(発注側に)言って、そう簡単に「結構ですよ」とはならない。担い手が育ってこない間は一部で外国人に頼るにしろ、そのままというわけにはいきません。
国内でわれわれが施工高を上げ、位置を確保していくためには、週休2日制だったり、いろいろな手当てをして担い手をそろえていくと同時に、ロボットを使うとかして生産性を一緒に上げていかないといけません。
――現場はどこまで「自動化」されるのでしょうか。
若い人がいなくなっても大丈夫な状態にしようと思ってもですね、全然いない状態でできるかというと、どうしてもそうはいかない。なるべく生産性を上げるということになると、やはり自動化をやらないといけない状態です。
――土木は?
全自動ですね。繰り返しの仕事が多いので、自動化を進めやすい。トンネルを掘るのに穴を掘って、発破を掛けて、崩して、岩ずり(破砕した岩石)を出してってというふうにやってきた。これをやるために、(爆破した後に)人が見に行って「この状態で大丈夫かどうか」って確認していました。ところが穴を爆破したばかりというのは、大きなずり(岩塊)やなんかが、まだ引っ付いてて、落ちてくるかもしれない。それだとそこへ(安心して)人が行けませんので、遠くから機械でもってトントントントンと岩を落として安全な状態にしないと、次の仕事に入れないんですよ。
昔は専門家がいて、「安全だから入っていいよ」とか「悪い」とか、判断をしたわけです。それを自動化して、大丈夫かどうかを全部画面で見る。1つの仕事を全部ロボットがやるとか、そういうことのできる時代に今なりつつある。今まで掘っていた人たちが機械にかわり、機械を扱っていた運転手がいなくなり、トンネル工事を受注するロボットの会社がいよいよ生まれるというような生産の革命が起きる。そういうことを今目指しているわけです。
――建築は?
全自動化がなかなか難しいんです。ロボット化できる部分はたくさんありますので、そういうものは組み合わせていきます。
ロボット化が面白いのはね、職人は一生この仕事だけと言われて、今の若い人は付いてくるでしょうか。ロボットを使うこともできる、総合的にやれるといった魅力がないと、というふうになるんですよ。
職人の世界はこれしかできないではなくて、この仕事も、あるいはロボットを使う仕事も、あるいは現場全体をコントロールする仕事も、1つの会社でできるということを目指しているところは魅力的であり、きっと若い人が来てくれるだろうと思う。