経営者が異常なくらいに
自己分析をする理由

箕輪さんプロフィール箕輪厚介
1985年、東京生まれ。株式会社幻冬舎の編集者。早稲田大学を卒業後、2010年に双葉社に入社。ファッション誌の広告営業を務める。広告部在籍中に、雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊。2015年、幻冬舎へ移籍。2017年にレーベル「NewsPicks Book」を起ち上げ、創刊1年で累計100万部を突破。約1,000名の会員を要するオンラインサロン「箕輪編集室」主宰。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス)など。

箕輪 僕が編集を担当している著者はみんな独特の世界観を持っているんですが、異常なくらいに自己分析している人が多い。特に今、経営者の人たちは魂を深掘るほうに向かっているんですよね。たとえば、瞑想とかコーチング。自分の魂をいかに掘るかなんです。優秀な人は圧倒的な努力で結果を出したときに、この次はコモディティになると気づいています。

今僕は株式会社アカツキの塩田元規さんと一緒に本をつくってるんですけど、あの人って超まじめで。ロジックでゲーム会社をやって、努力で行くところまで行った人なんですけど、「このままじゃダメだ」と気づいてからは、ロジックだけに頼るんじゃなくて、自分をものすごく掘り下げているんですよ。今はもう、かなりスピリチュアルな世界に行っています。

塩田さんは「遊びが仕事になる時代」という主旨の本を出したいって言っていて、最初はそれで進めていたんですけど、「いや違う。今は『魂』だ」という話になって、そっちにシフトすることにしたんです。

僕はこれからはスピリチュアルの時代が来ると思っていて。マインドフルネスのような、自分の内面といかに向き合うかという時代になると思うんです。

前田 山口周さんも「『役に立つ』から『意味』の時代に」と言っていますが、まさに役に立つという「機能」の時代から、意味がある「文脈」の時代になると思っています。

起業家のレースというのは、そもそも元々は、「機能」の中での戦いですよね。Googleも機能だし、Amazonも機能が勝負。そして時価総額はいくらなのか。それは、「『役に立つ』を売っている」っていうことです。

「役に立つものを売る」レースでは、ロジカルに努力していけば一定勝っていく。だけど、今の時代は、情報があまりにも瞬時に行き渡ってしまう。これは大きな社会変化だと思うんです。

今までは、ある企業が新しい技術を開発したときに、技術の裏側に隠された文脈が世のなかに広まるまでのタイムラグがあったはずなんです。だけど、今は情報が瞬時に知れ渡る。まさにコモディティ化の速度が圧倒的に上がったわけです。「どうしてこの水が美味しくできるか」という科学なんて、一瞬でわかってしまう。

そうなると、水の美味しさや軟水何%かといった「ロジック」では差別化ができなくなる。だから、その裏側にある文脈でしか差別化ができないんですね。優秀な起業家はそこに気づいているんじゃないでしょうか。

箕輪 そういうことです。だから、たとえば「この水を1本買うごとに10円が寄付されます」といったことをして、「私たちは水を売ることによってこういう世界を実現したい」という物語しか違いを生まない。

前田 裏側のストーリーが、それを選ぶ理由になるわけです。

今はネットの業界でしか起きていないくても、これから、世の中全体でこの現象が起き始めるんじゃないかと思っています。

アカツキの塩田さんも、これまで「機能」の世界での戦いで勝ってきた。しかし、今後はそのさらに次の「意味」の世界で戦おうとしているわけですね。

箕輪 そこで思うのが、前田さんと塩田さんは同じDeNA出身で、超ロジカルでエリートな集団だったわけですが、だからこそ、2人はそこから脱却しているんですよね。

もう「ロジック」の戦いを極めたから。限界をいち早く感じたんだなって思うんです。DeNA自体が変わっているかはわからないけど、DeNA出身の起業家がみんな物語の方向に行っているのがすごく面白い。

前田 次の時代は、「魂」の能力を高めて行かないと勝てない、ということですよね。きっと多くの人は、この社会変化に気づいていると思います。

熊谷 とはいえ、単純にすぐにスピリチュアルに行けばいいかというと、たぶんそうじゃなくて、前田さんが圧倒的に結果を出してきたように、まずは圧倒的に自己分析をして、目の前のロジカル戦争の中で、ちゃんと自分の目標設定をして戦う必要があるんだと思います。

なんとなく、スピリチュアルの世界って、油断すると気持ちいいし楽しいじゃないですか。すっと横移動していれば努力しないステージでいられる。

だから、まずは「自分がどこまで到達したいのか」をちゃんと分析して、絶対に結果に執着することです。執着して結果を出したときに、結果よりも大事なプロセスとか、スピリチュアルなものの尊さに気づいて次の自己分析が始まるんだと思います。

前田 まさにおっしゃる通りです。理屈で考え得ることをやりきった上で魂を深める。だから今、学生だけじゃなく、この時代を生き抜こうとする人々にとって自己分析が必要だと強く思います。

※本記事は2019年7月4日におこなわれたイベント「絶対内定×メモの魔力 〜自分の未来を作る究極の自己分析〜」をもとに作成しました。