「国内第1号」となる治療用アプリが2019年度中に承認される見通しだ。メドテック(医療IT)ベンチャーであるキュア・アップが慶應義塾大学と共同開発した禁煙治療(ニコチン依存症治療)用アプリの「CureApp禁煙」は世に出回っている健康系アプリとは一線を画し、臨床試験で有効性のエビデンス(科学的根拠)を得ており、承認取得後は医療機関で薬のように処方される。同社以外にもベンチャーのサスメドや製薬大手らが治療用アプリの開発を進めている。スマートフォンなどを通じて治療するアプリが薬に取って代わるのか。医療費高騰を解消する切り札になるのか。そのポテンシャルをキュア・アップの佐竹晃太最高経営責任者(CEO)兼医師に問うた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
医療以外は技術進化でコストが下がった
「新薬だから医療費が上がる」の常識を覆す
――今処方されている高血圧の薬は特許が切れているものばかり。製薬業界は生活習慣病、とりわけ高血圧領域での新薬開発に力を入れなくなりました。この分野で次の画期的な“新薬”は治療用アプリになりますか。
私はそう思います。化合物はいろいろと開発し尽くされ、創薬によるアプローチは年々イノベーションが起こりづらくなっている。行動変容からアプローチするアプリには、余白がまだまだたくさんある。薬と同じぐらい、あるいはそれ以上の効果を期待できると考えています。
――治療用アプリが薬の代替になることもありますか。
十分あると思います。基本的にはエビデンスや信頼を積み重ねた伝統的な治療が重要視されますが、新しいものも使っていく中で本当に良いとなれば、残っていきます。現状ですぐ薬をどうのこうのということはなくても、20年、30年のスパンで見ると、薬に置き換わる役割を担うことに違和感はありません。
――最初の治療で処方される第一選択薬が薬ではなくアプリになったり、高血圧気味の人や糖尿病になりかけている予備軍に対してアプリで治療を始めたりすることもありますか。
そういうような世の中もあり得る。治療用アプリは副作用を考えなくていいし、本質的に生活習慣を改善する。治療用アプリが第一選択薬になるという未来を、医療のあるべき姿として目指したいです。
――がんの治療薬に国内で過去最高の3349万円の薬価が付くなど、新薬の価格高騰が騒がれています。「技術進化イコール医療費高騰」なんでしょうか。
医療以外の分野では、技術の進化を通じてコストが下がり、その結果、値段も下がっているんですよね。利便性を向上させながらも。
なのに、医療では新しい治療が出れば出るほど、どんどんその医療費が上がっている。新しい薬やデバイスであればその値段も医療費も上がるのは当然という常識を覆し得るイノベーションが治療用アプリです。