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欧米で糖尿病の薬に新たな序列ができている。日本では医者が患者の病態に応じて薬を使い分けてきたが、そのトレンドはどんなものなのか。糖尿病、高血圧、脂質異常症の薬における「処方金額」ランキングから新しい薬の動向を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

糖尿病薬に新たな序列
SGLT2薬とGLP-1薬が格上げ

 糖質制限の第一人者としても有名な糖尿病医、北里大学北里研究所病院の糖尿病センター長である山田悟医師は最近、糖尿病患者に処方する薬の優先順位を変えた。

 医者にとっては学会が作成したガイドラインが教科書のようなものだ。日本の糖尿病医であれば、日本糖尿病学会のガイドラインに記された薬物療法が基本となる。そこには最も優先される第一選択薬、次に優先される第二選択薬などの使い分けは明記されてこなかった(日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2016」)。患者の病態に応じて医者がさまざまな薬を使い分けるよう促している。

 対して、欧米の学会は具体的に優先順位を付けている。第一選択薬はメトホルミンという古くからある薬。第二選択薬に関しては主立った種類のどれを使ってもよかったが、最近になって大きな変化が起きた。第二選択薬に新たな序列ができたのだ。

 心血管疾患を経験していた患者や慢性腎臓病を合併した患者、また体重を減らす必要のある患者など、多くの患者でSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の二つが第二選択薬として優先されることになった。二つの薬は心臓病を予防したり、腎臓を保護したりする効果がある。その上、低血糖を起こさず、体重を減らす効果も見られた。肥満の患者が多い欧米では妥当といえるものなのだろう。

 山田医師はこれまで、太っている患者にはメトホルミン、痩せている患者にはDPP-4阻害薬を第一選択薬としていた。太っているとインスリンの働きが低下するという考え方があるが、メトホルミンはインスリン抵抗性を改善する。また痩せた患者はインスリン分泌が不足しているが、DPP-4阻害薬はその分泌を促す。こうした理由があったからだ。

 糖尿病治療の目的は、単に血糖値を下げるだけではなく、心臓病や腎臓病などを含めた合併症を予防し、死亡率を低減することにある。山田医師は患者が太っていても痩せていてもメトホルミンを第一選択薬にした。この薬は昔から心臓病の予防効果を示しており、体形にかかわらず日本人の血糖値を改善する効果があるとする論文も報告されているからだ。世界でトップ糖尿病薬としての地位を確立している。

 第二選択薬も変えた。これまでは太っている患者にはDPP-4阻害薬、痩せている患者にはインスリン分泌を促進するスルホニル尿素薬を少量使ってきた。それを太っている患者には欧米と同様にSGLT2阻害薬にした。痩せている患者には今のところDPP-4阻害薬を使っている。

 このように、国内で糖尿病薬は医者それぞれの判断で処方されている状況だ。では、全国で総じて選ばれているものは何なのか。この点が気になってくる。

 糖尿病だけの話ではない。それぞれの病気でどのような薬が処方されているのか、薬ごとの処方された患者数や処方金額などは一般には知られていない。そうしたデータを入手している企業はごく限られ、データは一部の企業やアカデミアなどへ提供されるにとどまっているからだ。データを持つ企業の一つ、医療情報サービスを手掛けるメディカル・データ・ビジョンは患者にデータを役立ててもらいたいと考えた。そこでこの特集で、薬の処方患者数および処方金額のデータを初めて大々的に一般公開した。